全球大気-海洋システムにおける十年規模変動
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概要
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観測期間30年〜50年の全球海面水温 (SST)、海面気圧、海上風、降水量、北半球500hPa高度のデータを用いて、大気-海洋システムの年々〜十年規模変動を調べた。全球の大気・海洋で最も卓越する年々変動は、エルニーニョ・南方振動 (ENSO) に伴う変動である。十年規模変動に関しては、2種類の変動が存在することが明らかになった。第1の十年規模変動は、主に太平洋域で顕著に現われ、1970年代後半に大きな変化が起きた。1978年頃を境に、熱帯の海面水温、とりわけ東部熱帯太平洋の海面水温が上昇している。逆に、南北太平洋の中緯度域で負の海面水温偏差が現われる。海面気圧は、東太平洋で負、西太平洋・インド洋で正偏差となっている。これに伴って、赤道西部〜東部太平洋で西風偏差が卓越し、熱帯のウオーカー循環が弱まっている。SSTが上昇している中・東部熱帯太平洋で降水量が増加している。合成図解析、特異値分解解析の結果、この変動に伴って大気中には太平洋-北米 (PNA) パターンが卓越することがわかった。このPNAパターンは、熱帯中・東部太平洋の海面水温の上昇に伴う対流活動の活発化によるものと考えられる。第2の十年規模変動は、北半球中緯度に大きな海面水温偏差を持つ。この変動に伴う北半球500hPa高度偏差は、中緯度と高緯度との間の南北シーソーである。特に、西大西洋で南北シーソーが顕著である。さらに、東アジアから北太平洋にかけて大きな正の高度偏差が卓越している。この第2モードは約15年の時間スケールで変動しており、最近では、1987年頃を境に符号が負から正に変化した。最後に、長期トレンドについても調べた。ほとんどの熱帯域で海面水温は上昇傾向にある。一方、北太平洋の海面水温は下降傾向にある。北大西洋に大きな海面気圧と海上風のトレンドがある。ほとんどの熱帯域では東風が強まる傾向がある。北半球500hPa高度では、最近50年の間PNAパターンが強まっている。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1997-06-25
著者
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