クワ栽培に伴う砂耕培地中の有機物蓄積
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概要
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クワ栽培に伴う培地の変化を有機物集積の面から調べた。ライシメーター(65cm×65cm×高さ80cm)にほとんど有機物を含まない砂を60cmの厚さに充填して,クワ(しんいちのせ)を1本植え,各区共通に無機肥料を施用したほか設計に従って有機物を施し,11年間栽培を続けた後,培地に蓄積した有機物の量と性質を調べた。設定した試験区は,1区=毎回収穫物を持ち出す,2区=毎回収穫物を還元する,3区=収穫物のうち,残条および葉を食した蚕のふんと蛹を還元するの3区である。得られた結果は次のとおりである。1)11年間の合計葉収量は,いずれの区も4000gを越え,収量順位は3区>2区>1区であった。2)各区の収穫ないし伐採された地上部持ち出しと還元による収支は,1区が収穫物の持ち出しにより炭素にして732g,窒素として36gのマイナス,2区は収穫物の還元により炭素として838g,窒素として40gのプラス,一部還元した3区は,還元と持ち出し量を差し引いた結果,炭素として243gのプラス,窒素として2gのマイナスとなった。3)しかし,培地の実測値によると,地上部を取り出した1区でも炭素で培地100g当たり65mg,全部投入した2区では234mg,一部投入した3区でも2区の9割に当たる190mgが約10年で蓄積したこと,窒素については,培地の量から試算して11年間で,炭素源を多く還元した2区は施用した無機質肥料量の約40%を培地に取り込む等の試算値が得られた。4)培地中の炭素,窒素の分布については,いずれも表層と最下層に多いが,地上部を全部還元した2区は表層10cmだけでなく20cmまでも蓄積量が多かった。5)蓄積した有機物を質の面から調べた結果,3区のうちで,2区が最も未熟な腐植酸が多く蓄積し,次が3区で,1区のものは,量的には少ないが,最も腐植化度は高いとみなされた。6)11年間の栽培により,全般に培地の酸性化が著しかったが,地上部の有機物の還元により,表層の酸性化は抑制され,カルシウムの集積が認められた。7)ここで得られた結果からは,葉を収穫物として取り出しても,それを摂取した蚕のふんおよび蛹を培地に還元すれば,葉を還元した場合の8割程度有機物を培地に補いうると試算された。
- 1991-08-05
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