塩成干拓田に発生する水稲の酸性障害と亜鉛欠乏症との相互関係
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概要
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塩成干拓田に発生する酸性障害と亜鉛欠乏症の分布状況を調査した結果によると, 両障害はときとして隣接したほ場に発生していた。そこで, 両障害の相互関係について, 二, 三の調査実験を行ない, つぎの結果をえた。(1)両障害田土壌中には, ともに石灰質の酸性硫酸塩土壌が含まれている。(2)現地調査の結果によると, 土壌Ehの低下するにしたがって, 両障害の発生しているほ場の土壌pHは, ともに中性ないし微酸性付近に接近する。(3)両障害田土壌は酸化還元的環境変化によって, pHを著しく変動させる。(4)干拓当初の酸性障害田土壌は亜鉛の供給力が弱く, 濾紙の施与によって, 水稲に明瞭な亜鉛欠乏症を発生させた。また硫化物含量の多い亜鉛欠乏症土壌を畑状態処理して水稲を植えると, わずかに酸性障害らしい症状を呈した。したがって, 両障害は, 土壌の酸化還元的環境変化によって, 相互に変換しうるものと考えられる。(5)硫黄化合物含量の少ない亜鉛欠乏症土壌に硫酸根を施与すると, 土壌が還元状態のときに亜鉛欠乏症を助長する。(6)以上の結果, 塩成干拓田に分布する酸性硫酸塩土壌は, 含有する硫黄化合物の酸化型および還元型物質の作用によって, 水稲に酸性障害および亜鉛欠乏症を発生させるものと考えられる。本研究にさいし, 終始御指導をいただいた東北大学藤原彰夫教授に, またとりまとめにあたって適切な御助言をいただいた田町以信男博士に, 感謝の意を表わします。
- 1971-10-25
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