草地における土着アーバスキュラー菌根菌が牧草の生育に与える影響
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
採草地である牧草圃場及びその近隣にある野草地の土壌における優占土着AMFを明らかにするために,土壌トラップ法を用いてAMF胞子を増殖させ,Wet-sieving法にて胞子の採取を行った.またその優占AMF(Glomus clarum,Gigaspora margarita)が牧草圃場で生育しているオーチャードグラス(牧草O)とリードカナリーグラス(牧草R)に及ぼす影響を明らかにするためにポット試験を行い,植物体乾物重,植物体リン酸含量,菌根形成率及び栽培後ポット内のAMF胞子数を測定し以下の結果を得た.1)4ヵ所の地区から5属8種のAMF胞子を採取した.各地区の優占AMFは,A地区:Glomus clarum,B地区:Glomus Clarum,Acmulospora mellea,C地区:Gigaspora margarita, Sclerocystis pachycaulis,D地区:Scutellospora erythropa,Acaulospora mellesであった.また,胞子を培養した植物体の違いによって増殖したAMF胞子の種類と数に違いが見られた.2)牧草Oの生育量は,84日間栽培後において対照区が両AMF接種区と比べ大きくなった.菌根形成率は,84日間栽培後においてGl.c接種区で約60%,Gi.m接種区で約15%となった.牧草Rの生育量は,Gl.c接種区は常に対照区よりも大きかったが,Gi.m接種区は56日間栽培後までは対照区よりも小さく,84日間栽培後にはGl.c接種区,対照区よりも大きくなった.菌根形成率は,84日間栽培後においてGl.c接種区で約90%,Gi.m接種区で約50%となった.それぞれの胞子増加率は,Gi.mでは差がなかったが,Gl.cでは牧草Oの方が増加する傾向が見られた.以上のことから,AMFと宿主植物との間には親和性が存在し,条件によっては生育阻害効果を持つ可能性が示唆された.
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 2002-10-05
著者
関連論文
- 45 In vitro条件下におけるV.A.ミコリザ胞子接種方法に関する一考察(関東支部講演会要旨)
- 4-11 トウモロコシ根圏におけるV.A.ミコリザの胞子形成におよぼすリンの影響(4.土壌生物)
- アーバスキュラー菌根の形成がオーチャードグラスの生育に及ぼす影響
- 草地における土着アーバスキュラー菌根菌が牧草の生育に与える影響
- 8-1 異なった雑草管理がスマトラ島コーヒー園土壌のアーバスキュラー菌根菌の増殖とコーヒー幼植物の生育に与える影響(8.共生)
- 8-8 草地におけるアーバスキュラー菌根菌の生態と機能 : 土着アーバスキュラー菌根菌とオーチャードグラス種間における共生と寄生(8.共生)
- 58 草地におけるアーバスキュラー菌根菌の生態と機能 : 土着アーバスキュラー菌根菌と牧草との親和性(関東支部講演会)
- 8-14 インドネシア・スマトラ島の土地利用形態の異なる土壌におけるarbuscular菌根菌の特徴 : 一次林・二次林・コーヒー畑・雑草地における胞子数及び種類の比較(8.共生)