水稲品種における耐ころび型倒状性と幼植物の冠根の伸長角度,直径および破断強度との関係
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
湛水直播栽培では稲株の基部が地表近くの浅い土壌に位置するために稲体が株基から倒れる「ころび型倒状」が生じ易い。そこでまず,国内外の特徴的な20品種を圃場で2ヶ年にわたり栽培し,出穂後10日から14日に押し倒し抵抗値を測定した。その結果,1穂当たりの押し倒し抵抗値は2ヶ年の平均で0.56〜2.57Nで,大きな品種間差異を認めた。2ヶ年の押し倒し抵抗値は互いに高い正の相関関係にあったことから,この結果は各品種の遺伝的特性を示していると考えられた。そこでこれら20品種のうち,押し倒し抵抗値が大きかった関東PL12と,中程度であったM401,および小さかったキヌヒカリを選んで,出穂後10日における冠根の伸長角度を調べたところ,0〜18°の浅い角度で伸びる冠根数は,関東PL12がM401およびキヌヒカリよりも多かった。次に圃場で押し倒し抵抗値を測定した20品種について,幼植物の冠根形質を調べた。半球形の金属ネットを用いたバスケット法により,播種後23日における幼植物の冠根の伸長角度を水平(0°)から垂直(90°)まで5等分して測定した結果,押し倒し抵抗値が大きい品種は,幼植物において36〜54°に伸長する冠根数が多いことが明らかになった。また押し倒し抵抗値と,幼植物の太い冠根の引っ張りによる破断強度および冠根直径との間にも有意な正の相関関係があった。これらの結果から,幼植物の36〜54°に伸長する冠根数および冠根の破断強度により,品種の耐ころび型倒状性を早期に検定できる可能性があることがわかった。
- 日本作物学会の論文
- 2003-03-05
著者
-
坂井 真
農業・生物系特定産業技術研究機構
-
坂井 真
近畿中国四国農業研究センター:(現)青森農業試験場・藤坂支場
-
井辺 時雄
農業・生物系特定産業技術研究機構
-
坂田 勲
岐阜県中山間農業技術研究所
-
坂井 真
青森県農業試験場
-
井辺 時雄
農業技術研究機構
-
井辺 時雄
作物研
-
坂田 勲
岐阜県飛騨地域農業改良普及センター:東京農工大学大学院連合農学研究科
-
井辺 時雄
農研機構・作物研究所
関連論文
- 巨大胚水稲新品種「はいみのり」の育成
- 134 イネ穂重型系統の穂の着粒構造に見られる系統間差異
- 酒造掛米用水稲新品種「土佐錦」の育成
- 水稲新品種候補系統 "中国 81 号" の育成について
- 27 イネの穂重型系統の登熟特性について : 第2報 登熟期における葉緑素保持力と登熟後半の穂重増加との関係
- 26 イネの穂重型系統の登熟特性について : 第1報 穂重および籾重増加にみられる系統間差異
- 89 低アレルゲン系統米のデンプン粒の観察
- 稲発酵粗飼料向け茎葉多収型水稲品種「リーフスター」の育成
- 10 水稲飼料用品種リーフスターとその両親における稈のリグニン合成酵素シナミルアルコールデヒドロゲナーゼの特性
- P112 茎葉バイオマスが高い耐倒伏性極強の水稲長桿新品種「リーフスター」の育成とその特性
- 耐倒伏性極強の飼料用水稲長稈新品種リーフスターの育成とその特性
- ガンマ線照射による黄色胚乳突然変異を持つイネ新品種「初山吹」の育成
- 温暖地向き極良食味水稲新品種「きぬむすめ」の育成
- ホールクロップサイレージ用水稲新品種「タチアオバ」の育成
- 99 高温耐性水稲品種「にこまる」の良好な登熟には穂揃期の茎のNSCが多いことが貢献している(環境ストレス,日本作物学会第226回講演会)
- 暖地において密播した晩播水稲の生育および収量・品質特性(栽培)
- 暖地の湛水直播栽培における晩播水稲の生育および収量・品質特性(栽培)
- 玄米品質に優れる暖地向き良食味水稲品種「にこまる」の育成について
- 水稲新品種「あきまさり」の育成
- 玄米の窒素含量およびMg/K比と炊飯米の粘り値との関係
- 34 土壌型による食味の変動と米の成分との関係
- 水稲品種における幼植物の挫折強度と耐ころび型倒伏性の関係(品種・遺伝資源)
- 水稲品種における耐ころび型倒状性と幼植物の冠根の伸長角度,直径および破断強度との関係
- 飼料用水稲新品種「クサホナミ」の育成
- 58 水稲幼植物の冠根形質を用いた耐ころび型倒伏性早期検定の可能性
- 水稲幼植物を用いた耐転び型倒伏性早期検定の可能性
- イネの耐倒伏性に関する遺伝分析
- 32 腎臓疾患患者の食事療法用主食としての可消化性蛋白質の減少したイネ突然変異系統の育成と応用
- 水稲の湛水土中直播栽培における土中出芽性に優れた系統の選抜・育成
- 水稲の湛水土中直播栽培における土中出芽性の新たな検定方法と土中出芽性の新たな遺伝資源(品種・遺伝資源)
- 低アミロース米新品種「ミルキープリンセス」の育成
- 太陽熱利用による水温制御温室を用いた稲の世代促進育種方式
- 91 イネの食味に関与する遺伝子座の解析(組織培養・細胞工学)
- イネ品種[ミルキークイーン]の低アミロース性の遺伝子分析
- 低アミロース性イネ品種「ミルキークイーン」の遺伝子分析
- 岐阜県北部で発生したホウレンソウの葉脈間黄化症状の原因となった,黒ボク土壌におけるマンガン欠乏
- 水稲品種の押し倒し抵抗値に及ぼす伸長角度別の冠根の切断処理の影響(栽培)
- イネいもち病抵抗性遺伝子に関するMonogenic linesの育成
- イネいもち病抵抗性遺伝子に関する近似同質遺伝子系統の育成
- IRRI育成品種のいもち病抵抗性遺伝子の同定
- IRRIにおけるイネいもち病判別品種と準同質遺伝子系統の開発
- 食味と高温登熟条件下での玄米品質に優れる多収性水稲品種「にこまる」の育成
- イネの幼苗形質改良の育種的可能性
- (40)新しく育成されたイネいもち病菌レース国際判別系統のわが国のイネいもち病菌標準菌株に対する反応
- イネトビイロウンカ抵抗性遺伝子Bph10(t)の座乗領域の解析
- 95 稲(Oryza sativa L.)における炭素安定同位体比と関連形質のQTL解析(組織培養・細胞工学)
- コシヒカリ登場半世紀--回顧と今後の課題(7)コシヒカリの食味をDNAマーカーで選抜する
- カンキツPGIP(ポリガラクツロナーゼ阻害タンパク質)遺伝子組換えイネの作出及びいもち病抵抗性評価
- 水稲の湛水土中直播栽培における出芽性の検定方法と遺伝的変異
- 多収・良質・良食味の水稲新品種「あきだわら」の育成
- 早植えとフィルム被覆処理による水稲の高温寡照耐性の評価法
- ゴールドハル水稲品種リーフスターとその交雑後代系統の強稈性をもたらす要因
- イネ品種「初山吹」由来の新規アルカロイド oryzamutaic acids A-Gの構造
- 水稲飼料用品種リーフスターとその両親における稈のリグニン合成酵素シナミルアルコールデヒドロゲナーゼの特性 : ゴールドハル突然変異体との比較
- ガンマ線照射による黄色胚乳突然変異を持つイネ新品種「初山吹」の育成
- 食味と高温登熟条件下での玄米品質に優れる多収性水稲品種「にこまる」の育成
- ホールクロップサイレージ用水稲新品種「タチアオバ」の育成
- 温暖地向き極良食味水稲新品種「きぬむすめ」の育成
- 日本水稲品種のSSRマーカー多型に基づく分類および近縁係数と遺伝的距離との関係