水稲晩生種(瑞豊)における植物エージと短日感応程度の関係について
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概要
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水稲の晩生種は短日に敏感に感応して幼穂形成をみる極めて鋭敏な植物の一つである. しかし植物の一生を通じて同じ程度の感応度を持っている訳ではなく, 植物エージの若い時代においては短日感応度が低いことは一般に知られている事実である. そこで筆者は極晩生種の瑞豊を用いて短日に感応する能力が植物エージの何時の時期から生ずるものであるか. また植物エージの進行に伴って短日感応度がどのように変化して行くかを知るために二, 三の実験を行なったのである. (I) 1958年に生育初期の短日感応度についてある程度厳密に究明できるような実験を行ない, 第5葉以下というような幼植物時代においても僅かながら短日感応の能力が存在する証拠を見出したのである. (Fig. 1. 参照) (II) 同じく1958年に植物エージの進行とともに短日感応の程度がどのように変化して行くかについて一つの実験を行なった結果, 植物の短日感応程度は植物エージの進行とともに増大して行くものであることを知ったのである. (Fig. 2. 参照) (III) 次に1959年に上述のような植物エージと短日感応度との関係が植物の窒素についての栄養条件によって変化するものかどうかに関して一つの実験を行なった結果, 各段階のエージの植物について, 短日感応度は窒素の多少という栄養条件によってほとんど影響を受けないことが明らかとなった. (Fig. 3. 参照) (IV) 更に1959年に植物エージの進行に伴う短日感応度の増大を植物エージの進行に伴う葉面積の増大ということで説明できないものかと考え, 葉面積と短日感応度との関係を明らかにする目的で, 植物の部分的短日処理に関する一つの実験を行なったのである. その結果, 主茎のみ短日処理して他の分げつを暗黒に保った場合, 主茎のみ残して他の分げつを基部から切除して短日処理した場合, 主茎並びに総ての分げつの葉身部分を切除して短日処理した場合の何れにおいても, 全植物を短日処理した場合と全く同時に幼穂を形成したのである. この結果, 短日を受ける葉面積の大小ということは幼穂形成に無関係であり, 従って, エージの進行に伴う葉面積の増大ということでは短日感応度の増大を説明することはできなかった訳である. (Fig. 4. 参照) なお, この研究は前東京大学農学部教授野口弥吉博士を主任研究者とする総合研究「禾穀類とくに水稲・大小麦の幼穂の分化並ぴに発育に関する生埋生態学的研究」の一部として行なわれたものであり, 野口博士の御指導に対し深甚なる感謝の意を表する次第である.
- 日本作物学会の論文
- 1960-07-01
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