熱帯地域における水稲品種在来種および改良種の呼吸作用の比較 : インドネシヤ共和国, ランポン州の事例から
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概要
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ランポン州における在来種水稲は主として無肥料で腐植の多い水田に栽培され, 改良種は化学肥料の施用によって比較的排水条件のよい, 地力の中庸あるいは瘠薄な水田に栽培されている. 在来種は改良種よりも収量水準が低いにもかかわらず, 食味の良好であること, 低湿地での粗放栽培によく耐えること, などの特性によって, 水稲作付面積の約40%を占めている(1977年統計). 在来種の代表的な品種はKiseranであり, 改良種の主力はPelitaとIR-36であった. ランポン大学農学部周辺の農家が栽培している上記水稲を, ていねいに掘取り実験室に持ち帰って, 流気法によって稲体各部位から放出されるCO_2量を測定し, それを呼吸量とみなした. なお, 一部の材料は粉末として日本に持ち帰り, 化学分析の定法にしたがって各種の無機成分含量を定量した. 水稲体各部位の呼吸速度の範囲は, 在来, 改良の両品種ともにわが国で得られたYAMADA et alの成績とほとんど一致した. これを1茎当たりで表示すると, 幼穂形成期から成熟期に至るまで, 茎重の重い在来種の方が改良種よりも呼吸量は大であった. さらに, 標準的な単位面積当たりの茎数(穂数)を乗じて, 単位土地面積当たりに直すと, 改良種は穂数が多いために, 出穂期と乳熟期で在来種よりも大きな呼吸量を示し, 最高値を示した乳熟期で40.8gCO_2/m^2/12時間であり, 一方, 在来種は同時期で30.7gCO_2/m^2/12時間であった. 既存の資料から水稲群落の1日当たりの光合成量を推定すると, 最高値で, 100gCO_2/m^2/日であるから, 日中光合成の30-40%が呼吸で失なわれることとなる. 一般に登熟期では群落光合成速度が低下するので, この時期の呼吸消耗率はかなり大きな値をとることが推測される. 葉色(葉色板の示度)と根の呼吸速度との間には高い正の相関が認められ, 一般に登熟期に葉色の濃い在来種は, 同期間の根の呼吸速度が改良種よりも高い. これは, 土中にある上位節から発生した根の呼吸速度が高いためであって, これが在来種の特性とみなすことができる. 在来種は一株内での出穂が長期にわたり, おくれて出穂する茎から発生した上位根が高い呼吸速度を保持している. このため肥沃な水田においては, 登熟期間でも旺盛に養水分の吸収をおこなうことができるので, 葉色を濃く保つことができる. しかしながら, この特性のため化学肥料の施用は徒長をまねき, 倒伏を誘発する. また, 瘠薄な水田での無化学肥料栽培では, この根の特性を発揮することが困難である. 改良種は根の呼吸速度が穂ばらみ期以降において, 在来種よりも低く推移することから, 吸肥力が在来種より劣るものとみなせる. それ故に, 化学肥料の施用が不可欠の条件となり, さらに, 肥料分が不足すると登熟期において葉色が黄化する. また, 改良種は在来種に比して, 透水性が悪く水の停滞する水田での根腐れが目立ち, 排水条件整備の必要度が高いように観察された.
- 1983-12-05
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