光合成の種間差の機構に関する研究 : 第5報 高酸素濃度下における気孔の反応およびその光合成速度に及ぼす影響
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概要
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イネ(O.prennis)および,トウモロコシ(Zea mays L.)の気孔の反応および,その光合成速度に対する酸素濃度の影響を検討した. その結果,強光下において炭酸ガスが存在する場合に,両者の気孔の高酸素濃度下での反応に著るしい種間差が認められた. すなわち,イネの気孔は,炭酸ガス濃度に関係なく,酸素濃度の影響をほとんどうけなかった. また,光呼吸のない0.22%CO_2濃度下においても,酸素濃度を増大させた場合には,5O%O_2以上で光合成速度は低下した. O.22%CO_2下における8O%O_2以下での光合成阻害量は,2O%O_2の時の光合成速度のほぼ20%であった. これは,気孔,光呼吸とは関係のない可逆性のある真の光合成の酸素による阻害と考えられた. 一方,トウモロコシにおいては,炭酸ガスのない空気中では酸素による気孔の閉鎖は認められなかったが,0.03および0.22%CO_2においては光が強くなるにつれて,また,酸素濃度が40%以上になると酸素濃度の増大につれて,気孔は閉鎖した. 強光下(0.3cal cm^<-2>min.^<1>,400-700 nm)において酸素濃度を80%にすると,光合成速度は20%O_2下での値の60%という大きな低下を示した. このトウモロコシにおける強光下の高酸素による大きな光合成の阻害はイネではみられない高酸素による気孔の閉鎖と,イネの光呼吸がない場合にもみられた可逆性のある真の光合成の阻害の相加効果によると考えられた. また,酸素による光合成阻害量と気孔の閉鎖割合の間には,一定の関係が存在し,高酸素濃度は,光合成阻害を通じて気孔閉鎖をもたらず可能性のあることが示唆された.
- 日本作物学会の論文
- 1979-12-30
著者
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