光競争条件下にある二種の植物混合群落の生長のシミュレーション
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概要
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複雑なシンテムの動態を明らかにする方法として注目されているシスデムダイナミックスを用いて, 作物・雑草の競争を想定した二種混合群落の生長のモデル化とシミュレーションを行つた. モデルは次の基本構造から成り立つている. 1. モデル群落は, (1)光合成による物質生産, (2)呼吸によるその消費, (3)物質の転流・分配という過程を経て, 生長を続けるものとした(図1). この過程では種間競争は光要因に関してのみ生ずると考えた. 2. 二種の植物の光競争に関しては, 群落全体を5層に分け, 層別葉面積の決定, 群落の層別平均光強度の決定, 層別の光合成速度の決定という3つのサブシステムを通じて実現することとした. 3. 層別葉面積は両種の植物の地上部乾物重・草高・群落の高さと葉面積指数および層別の葉面積密度パターン(図3)から決定した. 4. 群落内の平均光強度, 光合成速度は群落上の日射強度を一定とし, 各層における光吸収を指数関数で近似して求めた. 5. 呼吸は暗呼吸と光呼吸に分け, 暗呼吸量は植物の各器官の乾物量, 光呼吸は総光合成量に比例すると仮定した. 6. 光合成産物はいつたん乾物一時貯蔵機構に貯えられ, ここから一定の割合で葉・茎・根に分配されるものとした. シミュレーションの結果は次のようであつた. 1. 混合群落の生長モデルを用い, 100日間のシミュレーションを行なつた. モデル中の植物は陸稲とメヒシバを想定した. 2. パラメーター値と初期値を表1, 2のように設定して計算した結果と, 圃場条件で陸稲とメヒシバを交互植した時の乾物重の測定値とを比較した. メヒシバの乾物重の計算値は測定値をやや下まわつたが, 全体の生長パターンはシミュレーションと実測値で良い一致がみられた(図6). 3. モデルのバラメーターの中, 比葉面積, 呼吸係数および各器官への乾物分配率の値を変更してシミュレーションを行なつた. その結果, 両種の乾物重に対し, 計算に用いた値の範囲では, 比葉面積と乾物分配率の影響が大きく, 呼吸係数の影響は比較的小さかつた(図7〜9). 4. 両種の全乾物重の初期値を変えて, (1)完全除草, (2)生育中期の除草, (3)生育初期の除草(4)無除草を想定したシミュレーションを行なつたところ(表3), モデル群落の乾物重の曲線は, 圃場試験の測定値と無除草の場合を除きよく似た曲線を示した(図10). このような結果について, モデルの改良すべき点などを考察した.
- 日本作物学会の論文
- 1974-12-30
著者
-
宇田川 武俊
(元)農業環境技術研究所
-
武田 元吉
農林省農業技術研究所
-
宇田川 武俊
農林省農業技術研究所
-
岩城 英夫
農林省農業技術研究所
-
高柳 繁
農林省九州農業試験場
-
高柳 繁
農林省農業技術研究所
-
武田 元吉
栃木県農業試験場栃木分場
-
宇田川 武俊
農技研
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