作物の分枝性に関する研究 : 第6報 とうもろこし茎部のインドール酢酸酸化酵素の性質について
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概要
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とうもろこしの分枝性とインドール酢酸酸化酵素活性との関係を研究するに先立つて, 同酵素の性質ならびに純化方法について, 圃場で生育させたとうもろこし幼植物の茎部から抽出した酵素を用いて若干の研究を行なつた. 従来, いくつかの植物について, インドール酢酸酸化酵素の阻害物質が存在することが知られているが, とうもろこし茎部からの粗酵素液についても阻害物質による著しい反応開始の遅れ(lag time)がみられた. そこで, アセトンを用いて阻害物質を除去する方法を検討した結果, この酵素では粗酵素液 1mlに対して冷アセトン2〜3mlを加えて攪拌し0℃下に約10分間おいた後, 3,000×9で3分間程度遠心分離し, その沈殿をはじめの粗酵素液と同量の緩衡液に溶かす方法がよいことがわかつた. この際もつと強い遠心分離を行なつても, ただlag timeが大きくなるのみで, 酵素活性は増加しなかった. この方法で純化した酵素液を用い, いくつかの性質について実験を行なつた結果, 次のことが認められた. 1. 反応の最適PHは5.6近辺であつた. 2. マンガン(MnCl_2)および2, 4-dichlorophenol (DCP)がこの酵素の反応に必要なことが他の植物で知られているが, とうもろこしの酵素でも両者ともに10^<-4>M程度の濃度で存在する時, 反応が最も速やかであつた. 3. 酵素濃度を変えて反応を行なわせた場合および上記pHの影響に関する実験の際の反応の進み方を検討した結果, この酵素によるインドール酢酸(IAA)の酸化反応が全体として1次反応に従つて進むことが認められた. また, 最適pHがら離れたpHでは, 反応が1次反応として期待される速度よりも遅れてくることがみられた. 1次反応の場合の反応速度恒数k(2.303/t log_<10> a_0/a_t)で表わした場合の酵素活性の値と, 一定時間内でのIAAの酸化量で表わした場合の酵素活性を比較すると, 前者の方が真の酵素濃度に近いことが認められた. またlag timeを正確に知るためには, 従来用いられている普通目盛によるグラフよりも, IAA濃度を対数で示したグラフによる方が, 反応が直線で示されるため誤差が少ないことが知られた.
- 日本作物学会の論文
- 1969-03-10
著者
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