4-nitroquinoline 1-oxide誘発ラット舌癌発生過程における細胞動態とP型カドヘリンとの関連
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概要
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口腔癌は悪性転化能と細胞増殖能を得て,多段階的な発癌過程をとることが知られている.すなわち,異常な細胞増殖と形態形成を呈しながら上皮過形成,異形成から癌へと進行する.カドヘリンは上皮組織の構築に必須の細胞間接着分子で,なかでもP型カドヘリンは細胞増殖に関連し器官形成や組織構築に重要な役割を担っている.しかし,発癌過程におけるP型カドヘリンの役割はいまだに明らかにされていない。今回私たちは4-nitroquinoline 1-oxide(4NQO)誘発舌癌モデルを用いてBromodeoxyuridine(BrdU)および細胞周期因子サイクリンD1の発現性とP型カドへリンの発現性との関連を検索し,発癌過程における細胞周期と組織構築との関連を免疫組織化学的および生化学的に検討した.材料および方法生後7週齢のS-D系雄ラット67匹を実験に用いた。発癌群40匹には50ppmの濃度に調整した4NQO水溶液を投与した.対照群27匹には水道水のみを投与した.4NQO投与後,4,8,12,16,18,20,24週および28週の時点で安楽死させたのち,病変部を含めて舌を一塊として摘出した,なお安楽死1時間前にBrdUを20mg/kg腹腔内に投与した.摘出した各週の舌組織を用いてBrdU,サイクリンD1およびP型カドへリンの発現変化を免疫組織化学的に検討した.また生化学的検索には,200μgで定量した組織をWestern blotting法にて検索した.結果および考察対照群の健常舌粘膜上皮では,BrdUおよびサイクリンD1は基底細胞の核に局在していた.P型カドヘリンは基底細胞の細胞膜にのみ発現していたが,間質と接する部位では発現がみられなかった.上皮の肥厚が始まる過形成期では,両細胞周期因子の発現とP型カドヘリンの発現は対照群と同様であった.上皮異形成期では,BrdUおよびサイクリンD1の過剰発現がみられ有意に増加していた(p=0.0005).特にサイクリンD1の発現は有棘層細胞の核にまでおよんでいた.P型カドヘリンにおいても基底細胞から有棘層細胞の細胞膜にまで発現がおよんでいた.扁平上皮癌では,両細胞周期因子は癌胞巣外層の癌細胞の核にみられた.また,P型カドヘリンは癌真珠を除いた癌細胞を構成する細胞の細胞膜に発現していた.BrdU陽性細胞率とサイクリンD1細胞率は正の相関性(r=0.9298)を示した.Western blotting法でも,上皮異形成期から扁平上皮癌にかけて,サイクリンD1とP型カドヘリンのタンパク過剰発現がみられた.以上の結果から,サイクリンD1の過剰発現がみられた上皮異形成期の有棘細胞はG1期であることが考えられた,また,これらの細胞膜にP型カドヘリンが発現していたことから組織構築異常の分岐点であることが示唆された.これらのことから本実験モデルでは,上皮異形成期にP型カドヘリンとサイクリンD1の過剰発現が誘導され,細胞周期をS期へと進行させ,細胞増殖活性と組織構築異常を得て悪性転化能を生じていることが考えられた.
- 2002-06-25
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