口腔扁平上皮癌におけるP型カドヘリンおよびサイクリンD1の発現
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概要
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カドヘリンは,細胞間の接着に関与する膜貫通型糖タンパク質で主として接着帯に分布し,Ca^2+の存在下で機能発現する接着分子である.それには上皮に存在するE型,神経に存在するN型,胎盤に存在するP型などが知られている.とくに,P型カドヘリンは胎盤で見いだされた接着分子で上皮にも存在し,基底細胞層などの高い増殖能をもつ細胞の細胞膜にみられる.一方,サイクリンはサイクリン依存性キナーゼ(cdk)と結合し,タンパク質リン酸化酵素活性を働かせるタンパク質であり,A〜Hまでの8種類に分類されている.そのうち,サイクリンD1は,G1期に最も多く発現し,細胞が休止状態から細胞周期へ移行するときに作用するといわれている.今回,口腔癌細胞の接着能および増殖能を明らかにするために,P型カドヘリンおよびサイクリンD1の発現を免疫組織化学的に検索した.生検で得られた上皮過形成8例,上皮異形成5例および扁平上皮癌52例を用いた.組織をホルマリンで固定し,通法に従ってパラフィン包埋し,厚さ4μmのパラフィン切片とした.脱パラフィン後,切片を10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)に浸漬し,121℃,15分間オートクレーブで抗原の賦活化を行った.ついで内因性のペルオキシダーゼを失活するため,3%過酸化水素水に切片を室温,5分間浸漬した.その後,抗P型カドヘリンマウスモノクローナル抗体と室温で30分間,および抗サイクリンD1マウスモノクローナル抗体と室温で60分間それぞれ反応させた.PBSで洗浄後,ペルオキシダーゼ標識デキストランポリマーと前者の抗体および後者の抗体に対してそれぞれ室温で30分間および60分間反応させた.PBSで5分間3回洗浄後,0.02%ジアミノベンチジンと0.005%過酸化水素と室温5分間,反応して発色させ,ヘマトキシリンで核染色を行った.正常口腔粘膜や上皮過形成におけるP型カドヘリンの発現は,基底膜面を除く基底細胞の細胞膜にみられたが,有棘細胞層や角質層には認められなかった.サイクリンD1の発現は,基底細胞や傍基底細胞層の細胞の核に散在的にみられた.しかし,有棘細胞層や角質層には認められなかった.上皮異形成におけるP型カドヘリンの発現は,上皮過形成のものと比較すると基底膜面を除く基底細胞の細胞膜および有棘細胞層の細胞の膜にみられた.上皮異形成の程度が高度になるに従ってP型カドヘリンは過剰に発現した.D1の発現も,P型カドヘリンと同様に基底細胞層から有棘細胞層にかけての多数の細胞の核に強くなった.扁平上皮癌におけるP型カドヘリンの発現は,癌胞巣周辺部から中心部にかけての細胞の膜にみられた.しかし,間質と接する部の細胞膜や癌真珠を構成している細胞の膜にはみられなかった.サイクリンD1の発現は,胞巣を構成しているすべての癌細胞の核に発現がみられた.P型カドヘリンの発現と扁平上皮癌の組織学的分化度との間には有意に相関がみられた(P<0.001).サイクリンD1の発現と扁平上皮癌の組織学的分化度の間には有意な相関は認められなかった(p=0.075).P型カドヘリンとサイクリンD1の発現の間に有意な相関がみられた(p<0.05).P型カドヘリンは,上皮異形成における基底細胞層および扁平上皮癌の増殖能の強い細胞の膜に過剰発現するとともに,サイクリンD1の過剰発現を伴っていた.したがって,P型カドヘリンは,細胞接着だけでなく細胞増殖にも関与し,細胞周期の調節因子と関連していることが示唆される.
- 2002-06-25
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