ネコ下顎骨仮骨延長術の下歯槽神経に及ぼす影響
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概要
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仮骨延長術は硬組織の延長のみでなく神経,血管および皮膚粘膜などの軟組織も同時に延長できる利点がある.同術式は近年,四肢における変形や形態異常に対する治療だけでなく,口腔外科領域での小下顎症や顎変形症の治療にも用いられている.下顎骨を延長する場合,骨切り部位に相当する下顎骨体部には下顎管および下歯槽神経血管束が存在する.しかし,下顎骨に仮骨延長術を施行する際,下歯槽神経の受ける影響についての研究報告は少なく,詳細に解析されていない.そこで,われわれはネコの下顎骨を用いて仮骨延長術の下歯槽神経に及ぼす影響について,下歯槽神経への電気刺激に対する開口反射を指標に電気生理学的手法によってその変化を検討するとともに,末梢神経損傷後の神経回復過程に合成されるgrowth-associated protein 43(GAP-43)(以下,GAP-43)に注目し,下歯槽神経におけるGAP-43の変化を免疫組織化学的に検討した.実験材料および方法ネコを用い,全身麻酔下にて片側の下顎第2前臼歯と後臼歯間で骨切り術を施行し延長装置を装着した(延長群).1/dayで7日間,計7の延長を行った後に固定した,電気生理学的検索には術前,術直後,延長終了時,延長後1週,2週,3週および4週に,オトガイ孔を介して下歯槽神経への直接電気刺激に対する開口反射を顎二腹筋からの筋電図で導出し,その最短潜時を測定した.同部位で骨切りのみを行い固定したもの(骨切り群)を対照として用いた.免疫組織化学的検索には後臼歯相当部の下歯槽神経線維を摘出し,GAP-43の発現を確認するとともにウエスタンブロット法により経時的にその発現の変化を検討した.なお免疫組織化学的検索とウエスタンブロット法の対照は正常ネコ下歯槽神経を用いた.実験結果電気生理学的には術直後では延長群,骨切り群ともに術前に比べて著しく潜時が延長していた.延長群の延長終了時では潜時は術直後とほぼ同じ値を示したのに対して,骨切り群では術前に近い値を示した.延長群の潜時は延長後1週から回復の傾向を示すのに対して,骨切り群のそれは術後2週で術前に近い値まで回復していた.GAP-43の発現は延長終了時から延長後2週に最も強く認められたが,その後徐々に発現が減弱していた.結論骨延長によって下歯槽神経は損傷をうけるが,時間経過にともなって回復傾向が認められることが判明した.
- 大阪歯科学会の論文
- 2002-06-25
大阪歯科学会 | 論文
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