糖尿病ラット下顎骨の骨創治癒に関する共焦点レーザー走査顕微鏡的研究
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概要
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糖尿病は細小血管症や骨減少症を合併し, 全身的な骨代謝障害を生じると考えられている.下顎骨は咀嚼運動によるメカニカルストレスが加わる特殊な部位であるが, 力学的刺激への対応能力が低下すると思われる糖尿病の下顎骨における骨創治癒過程については定かでない.そこで糖尿病長期罹患ラットの下顎骨に骨欠損を作製し, 骨創の治癒過程を構造的観点から検索した.6週齢のWistar系雄ラットにストレプトゾトシンを注射して糖尿病を誘発させた群と緩衝液のみを注射した対照群の下顎骨に, それぞれ22週齢にて直径1.0mm, 深さ1.5mmの骨欠損を作製し, その治癒過程を光学顕微鏡および共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)で観察した.光学顕微鏡による観察では, 本来の下顎骨外郭の形態回復および機能的な内部構築の回復に対照群では約1か月必要と考えられたが, 糖尿病群では本来の構造には回復せず, 骨髄の形成もみられなかった.CLSMによる観察では, 新生骨の石灰化は両群とも経時的に窩底部から窩縁部へ推移していたが, 糖尿病群では遅れていた.またリモデリングの開始は対照群では術後11日であったが, 糖尿病群では術後14日以降と思われた.骨梁構築は, 対照群では初期で骨梁間に密な連結がみられ, 後期で骨梁幅を増すような石灰化標識が認められたが, 糖尿病群では初期で骨梁間の連結が疎であるため, 後期で連結性を増すような石灰化標識になっていた.三次元合成画像における骨梁間の連結は, 対照群と比べて糖尿病群は明らかに疎であったことから, 両群の連結性の差がより明確となった.以上より, 糖尿病長期罹患ラットの骨創治癒過程は初期にコラーゲン線維の成熟度が低いため新生骨の形成遅延が生じるだけでなく, 仮骨期, 治癒期でも骨梁の構築が遅れていた.その程度は対照群と比べて経時的に大きくなる傾向があり, 糖尿病群では骨代謝回転が低下していることが示唆される.
- 1997-12-25
著者
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