Prevotella intermedia細胞表層の走査電子顕微鏡像
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概要
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宿主-寄生者相互関係において, 細菌細胞の表層は, 宿主細胞と最初に接触する部位であり, 細菌が宿主に対して病気を起こさせる第一歩でもある. そのため細菌の付着因子の解析が生物学的, 生化学的および形態学的手法で進められている. 形態学的手法では, 主としてネガティブ染色法やシャドウイング法で線毛の有無やその特徴が透過電子顕微鏡(TEM)で研究されている. 宿主と細菌のかかわり合いは, 走査電子顕微鏡(SEM)でも, グルタルアルデヒド(GA)と四酸化オスミウム(OsO_4)で固定したヒト腸粘膜や培養細胞表面で観察されている. 付着したEscherichia coliやSalmonellaの細胞表層では線毛が認められている. しかし, ヒト口腔から分離したPrevotellaやPorphyromonasにおける細胞表層の立体像は十分には明らかにされていない. 本研究では, 細菌細胞の表層を高分解能SEMで観察するための至適方法を得るために, Prevotella intermedia (P. intermedia)の臨床分離株7株, 標準株2株およびPorphyromonas gingivalis(P. gingivalis)1株を用いて実験した. SEM試料は, 供試菌株をTodd Hewitt broth(Todd)またはCDC処方嫌気性菌用血液寒天培地(血液寒天培地)で培養後, GA-OsO_4固定法または凍結置換法(液化プロパンで凍結ののち, ドライアイス-アセトン槽で冷却したOsO_4-アセトンで固定)で作製した. 一部の試料には, 酢酸ウラニルあるいは燐タングステン酸でネガティブ染色を施し, 電界放射型SEM s-4,000で観察した. 供試菌株をToddで24時間培養後, GA-OsO_4固定法で試料を作製すると, すべての供試菌株の細胞表層は粒子構造物(粒子)で覆われていた. P. intermedia細胞表層の粒子は非常に明瞭に観察されたが, P. gingivalisではやや不明瞭であった. 粒子の大きさは34×61nm(14〜87×16〜95nm)であった. 小胞は全供試菌株において認められ, 分裂部位でとくに頻繁にみられ, その数は数個から数十個に及んでいた. ほとんどの長い連鎖状小胞は, その一部でガラス線維(支持体にガラスろ紙使用の場合)に付着していた. 小胞の大きさは51×201nm(45〜352×45〜352nm)であった. 凍結置換法を用いて液体培養した供試菌株をSEMで観察すると, 細胞表層の粒子は認められず, 菌株によって緩やかかあるいは細かい波状構造を呈していた. 小胞の観察頻度はGA-OsO_4固定法より少なかったが, その形や数は類似していた. 血液寒天培地に発育した細菌細胞をGA-OsO_4固定法と凍結置換法でSEM試料を作製すると, 液体培養と同様に, 細胞表層の粒子は前者では認められ, 後者では認められなかった. また, 小胞の観察頻度は前者では高く, 後者では低かった. 小胞の大きさは前者で67×296nm, 後者で113×332nmであった. 細胞の大きさはそれぞれ0.4×2.2μmと0.5×2.7μmであり, 後者の値が前者の値よりも大きかった. 血液寒天培地で発育した細菌細胞をpoly-L-lysine処理したアルミ箔上に載せ, GA-OsO_4固定法後にSEMで観察すると, 紐状構造物で細胞はアルミ箔に付着していた. 拡大像(6万倍)では細胞の表面に細かくて短い線維様構造物がけばだっていた. ネガティブ試料をTEMで観察すると, 線毛が認められたが, SEMでは認められなかった. 以上の結果から, 細菌細胞の表層構造は, GA-OsO_4固定法よりも凍結置換法でより本来の構造に近い状態に保存されるものと推定される. また, 線毛は, 導電染色法を用いると高倍率で観察できる可能性, および分裂部で多数形成される小胞が細菌の付着に関与している可能性も考えられる.
- 1993-08-25
著者
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