ヒト口腔由来Prevotella intermediaのβ-lactamase活性
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概要
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Prevotella intermedia(P. intermedia)はヒト口腔感染症から頻繁に分離されることから, 口腔感染症の発症と進展に重要な役割を演じていると考えられている. 本菌にはβ-lactam剤耐性株が存在し, アシドメトリーディスク法でβ-lactamase活性が検出されることから, この酵素が耐性機構に関与すると推定されている. しかし, 本菌由来のβ-lactamaseの性状についてはほとんど研究されていない. 本研究では, ヒト口腔から分離したP. intermediaのβ-lactam剤耐性機構を明らかにするために, ミクロヨード法でβ-lactamase活性を測定するとともに, 酵素の基質親和性, 誘導性およびタイプについて検討した. 供試菌株はヒト口腔感染症患者から分離, 同定し, 教室で保存しているP. intermedia 10株(0001, 0003, 0008, 0011, 0014, 0018, 0021, M4, M5およびM6)と標準株のP. intermediaATCC 25611およびATCC 33563を用いた. 供試菌株をTodd Hewitt broth(Todd)で嫌気培養後遠心した. その沈査を0.05Mリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁したのち, 超音波破砕器で細胞を破壊後, 再び遠心して得た上清を粗酵素液として実験に供した. β-Lactamase活性はミクロヨード法で, 粗酵素液中の蛋白量は蛋白測定キットで測定した. 供試菌株に対するβ-lactam剤の最小発育阻止濃度(MIC)はTodd Hewitt寒天培地を用いて寒天平板希釈法で求めた. 口腔由来株のβ-lactamaseは, アシドメトリーディスク法では, 全供試菌株で弱いcephalosporinase活性を示した. Toddで24時間供試菌を嫌気培養後, 酵素活性をミクロヨード法で測定し, その際, 口腔由来株の比活性はampicillin (ABPC)を基質としたとき24.0〜70.2mU/mg, cefazolin(CEZ)を基質としたとき23.5〜54.7mU/mgであったが, 標準株ではその活性は認められなかった. 0001, 0014および0020株をtrypticase soy broth, ToddおよびGAM brothで培養したとき, これら3株の酵素活性は15.3〜62.9mU/mgであった. Wilkins-Chalgren brothで培養したときの活性は5.9〜17.6mU/mgであり, 前者に比べて値は低かった. 0001と0020株をToddで24時間嫌気培養して界面活性剤の影響を調べた.デオキシコール酸ナトリウムでは, 酵素活性は1.7〜2.2倍に増加したが, CHAPSとTween80ではほとんど効果がみられなかった. Toddで培養した0001, 0014および0020株に1/2MICのPCGとCEXを添加後2時間培養すると, 0014株の酵素活性はPCG処理で1.1(基質ABPC)〜1.5倍(基質CEZ), CEX処理で2.0(基質ABPC)〜4.9倍(基質CEZ)に増加していた. 供試菌株由来酵素の基質親和性を調べると, 全酵素がCEZ, ABPCとcefuroximeを分解したが, cephaloridine, latamoxef(LMOX), imipenem (IPM)およびaztreonamの分解性は菌株によって異なっていた. 供試菌株に対するβ-lactam剤のMICはPCG, amoxicillin, bacampicillinおよびCEXでは1.6〜200μg/mlと大きかった. しかし, LMOXやIPMのMICは小さかった. 以上の結果,供試口腔由来P. intermediaのβ-lactam剤耐性には構成的に産生されたβ-lactamaseが深く関与しているものと推定される. 供試菌株由来の酵素は, 基質親和性からoxyiminocephalosporinase活性を有し, タイプ1とタイプ2が存在した. また, この酵素はCEXによって誘導される可能性が示唆された.
- 1993-08-25
著者
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