可溶性蛋白質の免疫原性に対する根管充填用シーラーの影響
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概要
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根管充填用シーラー(以下, シーラーと略す.)の組織刺激性に関しては, これまで多くの研究が行われ報告されてきている. それらの報告には, シーラー自体の細胞毒性あるいは組織為害性に関する報告が多い. しかし, シーラーの為害性が問題となる根尖周囲組織は, 根管を経由して到達した細菌性因子をはじめとする外来抗原の影響を受けやすい場所であり, この局所にはシーラーによる刺激と同時に外来抗原が共存することが考えられる. そこで, 本研究では, シーラーの生体に対する影響を評価する一環として, 根管あるいは根尖周囲に存在する抗原に対する宿主の免疫応答にシーラーがどう影響するかを検討した. すなわち, 最初に外来抗原の免疫原性に対するシーラーの影響を知る目的で, 免疫原として可溶性蛋白質であるkeyhole limpet hemocyanin (以下, KLHと略す.)を用い, これにApatite Root Sealer Type-1(三金工業), Canals(昭和薬品), Tubli-Seal(Kerr), Dentalis KEZ(ネオ製薬), Sealapex(Kerr)の5種類のシーラーを硬化させた後, 可及的に細かく粉砕したものを添加し, これを混合物として感作実験を行い, 抗原特異的な抗体の産生に対する各シーラーの影響を検索した. つづいて, 抗体産生の増強が認められたシーラーについては, それがサイトカイン誘導による効果であるか否かを検討するために, 血中IL-2量を測定した. KLHに対する抗体価の測定は, ELISA法を用いて行い, IL-2量の測定は, Mouse interleukin-2 ELISA Kit (Collaborative Research Inc.)を用いて行った. その結果, 次のような結論を得た. 1. Apatite Root Sealer Type-1粉末とKLHの懸濁液をB6マウスに接種した場合, すべてのKLH濃度において著しい抗体産生増強活性が認められた. また, IgG抗体価およびIgM抗体価も上昇した. 2. Dentalis KEZの場合は, 抗体産生増強活性は認められず, IgG抗体価も上昇しなかった. しかし, IgM抗体価の上昇がわずかに認められた. 3. Canalsの場合も, すべての免疫原濃度で抗体産生の増強が認められ, IgG抗体産生およびIgM抗体産生の増強が認められた. しかし, IgG抗体価に比較してIgM抗体価はやや低かった. 4. Sealapexの場合には, 免疫グロブリン抗体価およびIgG抗体価では上昇が認められなかったが, IgM抗体産生の増強が認められた. 5. Tubli-sealではSealapexの場合とは逆に免疫グロブリンおよびIgG抗体価の上昇が認められたが, IgM抗体産生増強活性は認められなかった. 6. 今回用いたシーラーによる抗体産生増強活性には, シーラーの種類によって著しい差のあることが示された. しかし, IgM抗体価に関してはシーラー間に有意差は認められなかった. また, 今回用いた5種類のシーラーは, negative controlに対して抗体産生を有意に抑制しなかった. 7. 血中IL-2量に関しては, 抗体産生増強活性を示したType-1, Canals, Tubli-sealのいずれのシーラーを混和した場合にも, negative controlに対して有意な上昇は認められなかった. またシーラー間の差も認められなかった.
- 大阪歯科学会の論文
- 1993-08-25
大阪歯科学会 | 論文
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