乳歯列期における歯間空隙の発現率およびその消長に関する研究
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概要
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近年, わが国における小児を囲む環境の変化は著しい. 生活の多様化とともに, とくに食生活の環境的変化に大きなものがみられ, 日常の食品選択の面から, 軟食, スナック化時代といわれている. そのために咀嚼力の低下とともに, 小児の顎ならびに咀嚼系機能の障害がみられるようになり, その結果, 歯列不正, 咬合不全, 顎関節不全などの問題が指摘されている. 日常臨床においても, 低年齢児の齲蝕罹患率の低下にもかかわらず,乳歯列の不正咬合, とくに前歯の叢生が増大しており, 小児から若年者, 成人へと咬合の不正がこのまま推移すれば社会的な問題となることを示している. そこで, 乳歯列期における歯間空隙について, その発現率, 性差, 経年的変化などについて縦断的な調査を行った. 研究材料として大阪市中央区のパドマ幼稚園児から得た資料を用いた. 同園の園児構成は, 年少組(4歳), 年中組(5歳), 年長組(6歳)に分けられていることから, それに従い, 以下資料を孤内の年齢で表現することとした. 被検者数は, 縦断的に観察できた520名(男児292名, 女児228名)で, 1987年から1990年までの3年間に毎年1回定期的に診査し, 霊長空隙(以下PSと略す.), 発育空隙(以下DSと略す.)および上顎乳犬歯と上顎第一乳臼歯間に存在する歯間空隙(以下CDと略す.)の有無ならびに空隙最について計測した. その結果, 次のような結果を得た. 1. 有隙型歯列の発現率は, 加齢的に減少した. 2. PSの発現率は, 上顎が下顎より発現率が高く, 加齢的に減少した. 3. CDの発現率は, 男女ともに4歳から5歳で増加し, 5歳から6歳で減少する傾向を示した. 4. DSの発現率は, PS(+)歯列のほうが, PS(-)歯列より高かった. 5. PS, CDおよびDSの経年的変化は, いずれも無変化型が最も高い発現率を示した. 以上の結果から, 日本人小児の正常な永久歯列の構成に必要な乳歯列における各歯間空隙の発現率ならびに空隙量の消長を明らかにすることができた. また, 過去の数値と比較して, 各歯間空隙の発現率ならびに空隙量の減少傾向の顕著なことが明らかになった. これらのことから, 乳歯列における早期の予防矯正的な対策の必要性が認められる.
- 1993-04-25
著者
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