Powell分析による日本人小児の側貌軟組織の平均値ならびに理想値について
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概要
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Powell分析は, 顔面の審美性を調査する分析法として歯科矯正学や形成外科学で広く臨床応用されているが, 実測長を直接比較するのではなく角度や距離計測値の比率から顔面のバランスを解析しているため, スナップ写真等からも簡単に分析できる簡便性を有している. また, 審美的に理想とされるデータが提供されているので, 矯正治療における治療目標(treatment goal)の軟組織の目標値を設定することができる. そのため, 多方面の歯科領域において使用されはじめているが発表されている基本的なデータが白人成人の理想値のみであり, 成長発育に伴う各計測値の成長変化に関するデータが提供されていないので小児歯科領域ではほとんど使用されていない. そこで, 本研究では, 側貌軟組織外形線の分析にPowell分析法を採用し, 小児歯科の臨床の場で使用できるように日本人小児の側貌軟組織外形線の平均値ならびに理想値を求める目的でこの研究を行った. 研究資料は, 大阪市の追手門学院小学校・中学校・高等学校の児童生徒のなかから希望者を募り,賛同を得た6歳から17歳までの児童生徒1,553人(男児920人, 女児633人)から得られた側貌顔面写真である. 側貌顔面の撮影時に, 自然頭位を取らせ, 口唇部に筋緊張が出ていないのを確認してから一定の距離(150cm)で撮影した. この側貌顔面写真を, Powell分析の側貌軟組織の各項目に従って計測し, この計測値を, 多変量解析プログラムHALBAUを用いて分析し, 6歳から17歳までの各年齢ごとの平均値と標準偏差を求めた. さらに, 性差ならびに6歳以後の成長変化について平均値の差の検定を行った. 平均値の差の検定は, 比較する2群間の母分散に関して, 等分散性の検定を行い, 等分散と仮定できた場合はStudentのt検定を, 等分散の仮説が棄却された場合はWelchの方法によって検定を行った. 次に,平均値を求めるために使用した側貌顔面写真のなかから, 16歳と17歳の男子166枚, 女子276枚について, 側貌をトレースして側貌外形線の透写図を作成し, これを理想値作成のための資料とした. 審美的側貌外形線の選択者として, 大阪歯科大学に在籍する20代の学生男女各20名計40名を選び, 彼らにこの276枚の透写図のなかから審美的に優れていると感じた側貌トレースを選択させた. この側貌トレースのなかで被選択率50%以上のトレースを審美的に優れた側貌外形線と定め, このデータより側貌の理想値を求めた. ついで, この理想値における男女間の違いならびに16歳および17歳の平均値との比較を行った. その結果, 1)日本人のPowell分析における各計測項目における6歳から17歳までの年齢別の平均値のデータを求めることができた. 2)Aesthetic triangleに関する4つの項目とNasolabial angleならびにSubnasale-StomionとStomion-Mentonの比は, 年齢による変化が認められなかった. Base to dorsum ratioと上顔面, 下顔面比を表わすNasion-SubnasaleとSubnasale-Mentonには, 経年的な変化が認められた. 3)審美的に優れたと評価された顔貌を抽出し, 理想値を設定した. これらのデータは, 咬合誘導ならびに矯正治療を行う際に, 日本人の側貌軟組織の治療目標の設定において重要な参考資料になると考える.
- 1993-04-25
著者
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