糖尿病ラット歯肉の毛細血管基底膜におけるIV型コラーゲンおよびラミニンの局在について
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概要
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糖尿病性細小血管症は, 高血糖状態に基づく各種代謝異常に起因して全身の諸臓器の細小血管に生ずる糖尿病特有の臓器障害と考えられ, 臨床的にはおもに糖尿病性腎症および網膜症として発現する. 病理組織学的には基底膜の肥厚が共通した病変として認められる. 基底膜の主要な構成成分は, IV型コラーゲンやラミニン, フィブロネクチンなどの糖蛋白であるが, その局在の変化については, 糖尿病性腎症の糸球体基底膜やメサンギウム領域において検討されている. 糖尿病における口腔領域の随伴症としては, 歯周疾患や感染症の頻度の上昇や重篤化, また術後の易感染性などが報告されている. これらの原因として, 基底膜肥厚に伴う血管透過性の変化や白血球機能の低下などがあげられているが, 未だ明確な根拠は明らかになっていない. また口腔粘膜においては糖尿病性細小血管症に起因する毛細血管基底膜の肥厚が確認されているが, 肥厚した基底膜の構成成分について超微構造的に検討した報告はなされていない. そこで本研究では, ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットの歯肉毛細血管における基底膜物質の局在を明らかにする目的で, IV型コラーゲンおよびラミニンについて免疫組織化学的に検索するとともに, 糖尿病罹患期間による影響を検討した. 実験材料および方法 実験には, 生後6週齢のオス Wistar 系ラットを固形飼料で自由摂食させたものを用いた. ストレプトゾトシン60mg/kg投与により糖尿病を誘発し, 発症後4週, 12週, 24週, 36週および48週齢のものを糖尿病群として実験に供し, 対照群には同週齢の正常ラットを用いた. 4%パラホルムアルデヒド固定液で灌流固定したのち, 下顎臼歯部頬側歯肉を摘出し, 凍結切片を作製した. 電顕標本では浮遊法により, また光顕標本ではゼラチンスライド上で, ABC法を用いて免疫染色を行った. 一次抗体には抗ラットラミニンポリクローナル抗体およびIV型コラーゲンポリクローナル抗体(ともにChemicon社)を使用した. 電顕写真における各実験群の毛細血管基底膜の一次抗体反応陽性領域の厚径は, McEwenの毛細血管基底膜厚径測定法による画像解析を行い比較し, すなわち二値化した写真上の陽性部分の面積および周長を測定し, 面積を周長の1/2で割ったものを免疫反応陽性部分の厚径として比較した. 結果 歯肉毛細血管基底膜および歯肉基底膜に, ラミニンおよびIV型コラーゲン陽性部分を認めた. 糖尿病群および対照群ともに飼育期間とラミニン陽性部分の厚みとの間に相関はなく, ラミニンの経時的な変化は認められなかった. IV型コラーゲンについて, 対照群の陽性部分は増齢的に増加する傾向を示した. この傾向は糖尿病群でも同様で, IV型コラーゲン陽性部分の厚みは12週以降で有意に増加していた. 糖尿病群と同週齢の対照群を比較すると, 36週および48週で糖尿病群におけるIV型コラーゲンが有意に増加していた. すなわち糖尿病群では増齢によるIV型コラーゲンの増加に加えて, 糖尿病罹患期間に応じた病的なIV型コラーゲン沈着が生じていた. 結論 以上の結果より, 糖尿病性細小血管症の結果として起こる歯肉毛細血管基底膜の肥厚は, IV型コラーゲンの増加によるもので, ラミニンは関与しないものと考えられた.
- 1993-04-25
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