ヌードマウス移植ヒト口腔癌細胞に対するCDDP誘導体cis-1, 1-Cyclobutanedicarboxylato (2R)-2-methyl-1, 4-butanediamine platinum (II) (NK-121) の抗腫瘍効果について
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概要
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最近の悪性腫瘍に対する化学療法の進歩はめざましいものがあるが, 単独で有効な抗癌剤はいまだ開発されておらず, 他の薬剤との併用, 放射線療法, 外科療法との集学的治療が行われている. われわれが取り扱う頭頚部領域では, とりわけ形態と機能の可及的保存が望まれる部位であり, 放射線療法と化学療法の果たす役割は大きい. 数ある抗癌剤の中でも, Rosenbergらにより1969年に抗腫瘍性が確認されたcis-diammine-dichloroplatinum (II) (以下, CDDPと略す) は頭頚部扁平上皮癌に対して有効であり, 現在盛んに臨床応用されている. しかし, 一方ではその重篤な腎毒性, 消化器障害が認められている. Cis-1, 1-Cyclobutanedicarboxylato (2R)-2-methyl-1, 4-butanediamineplatinum (II) (以下, NK-121と略す) は, そのCDDPの毒性軽減と抗腫瘍効果の増大を目的として開発された第二世代の白金化合物である. 抗腫瘍効果についてはCDDPと同様であり, 腎毒性についてはきわめて軽度となったが, 骨髄機能抑制を強く認めると報告されている. 著者はヒト口腔癌由来のKB細胞をヌードマウスに固形腫瘍として発育させたものを用いてNK-121の抗腫瘍効果の検討を行った. さらに扁平上皮癌に対して有効とされているPeplomycin (以下, PEPと略す) との併用効果についても検討を行った. 実験材料および実験方法 雌のヌードマウスBALB/cA Jcl-nu/nu (日本クレア, 東京) 4週齢のものを実験に供した. NK-121単独投与実験においては推定腫瘍重量が250〜300mgになったものを, PEPとの併用実験については推定腫瘍重量が750〜800mgになったものを1群5匹として用いた. 薬剤は腹腔内投与とし, 対照群には生理食塩水を腹腔内に投与した. NK-121単独投与実験については60, 80mg/kg1回投与, 10, 14, 18, 22, 26, 30, 34mg/kg5日間連日投与を行い, PEPとの併用実験についてはNK-121 18, 22, 26, 30mg/kg5日間連日投与し, 48時間経過したのちPEPを8mg/kg5日間連日投与した. 抗腫瘍効果の判定はBattelle Columbus Laboratories Protocolの方法を参考に, 投与開始後4日ごとに40日目まで行った. また, 副作用の指標として体重および白血球数, 赤血球数を測定した. 血球数の測定については尾静脈より血液10μlを採取しHematology Analyzer HA/5 (Clay adamus社, USA) にて血球数を測定し, 担癌無投与群, 無担癌無投与群のそれと比較した. 測定は採血によるストレスを考慮して8日ごとに行った. 結果ならびに結論は以下のとおりである. NK-121単独投与により著明な腫瘍の縮小を認めた. 体重減少は軽度であり, 白血球数, 赤血球数においても一時的な減少からの回復が認められた. PEPとの併用投与群では, NK-121単独投与群より高い抗腫瘍効果を得ることができ, 体重減少は同等の抗腫瘍効果を示す単独投与群に比べて少なかった. 以上より, NK-121はKB細胞に対して抗腫瘍効果が高く, 副作用の少ない化学療法剤であると考える. また, PEPとの併用投与は副作用を回避しつつ, より高い抗腫瘍効果が得られる投与法と考える.
- 1992-04-25
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