小児歯科領域におけるキャスタブルセラミックスの応用に関する研究 : とくに摩耗性と圧縮疲労特性について

概要

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近年開発されたキャスタブルセラミックスは, 生体親和性および審美性において非常に優れており, 密度や硬度などの物性はエナメル質に類似している. そのため, 最も優れた歯冠修復材料のひとつであるといわれている. しかしながら, キャスタブルセラミックスの永久歯での臨床例は散見されるようになってきたものの, 小児歯科領域での臨床応用は皆無に等しい. そこで著者は, キャスタブルセラミックスが乳歯の歯冠修復材料として応用可能かどうか検討を加えることを目的に本実験を計画し, 乳歯への臨床応用に際し, とくに重要と考えられる摩耗性および圧縮疲労特性について調査した. 1. 摩耗性実験に用いた材料はキャスタブルセラミックス, ヒト上下顎第二乳臼歯, そして乳歯歯冠修復材料として多用されている化学重合型低粘稠度コンポジットレジン, および光重合型臼歯用コンポジットレジンである. 摩耗試験機は稗田ほかが開発し若干の改良を加えたもので, 直径4mmのアルミナ粒子を研磨材として使用した. この試験機を2万回ごと, 10万回まで2Hzにて作動させ, 摩耗の体積変化を測定した. 体積変化の測定方法は各材料間の物性に関係なく摩耗量を体積変化で評価できる摩耗体積測定法を新しく考案した. そこで, まず最初に本測定法による測定値の精度を調査し, その有用性を検討した. つぎに本測定法を用いて, キャスタブルセラミックスと乳歯の摩耗性を比較した. 同時に, キャスタブルセラミックスの色調の調整に使用されるシェーディングポーセレンが摩耗性に影響を与えるかどうかを検討した. 2. 圧縮疲労特性本実験に使用した実験試料は, 直径4mm, 高さ8mmの円柱形に成型したキャスタブルセラミックスである. これほ電気油圧式材料強度試験機 (島津サーボパルサーFD-1) で繰り返し圧縮荷重を加えるための実験条件を決定するため, 最初に小児の最大咬合力を測定した. この測定結果を参考にして繰り返し圧縮荷重の条件を, 振動数 : 10Hz, 加振波型 : 正弦波, 繰り返し圧縮荷重回数 : 1万回, 10万回および100万回とし, 負荷荷重の下限値 : 1kgf, 上限値 : 50kgfと設定した. この条件下で繰り返し圧縮荷重終了後, インストロン型万能試験機 (INTESCO 2010型) に試料を取り付け, クロスヘッドスピード : 0.5mm/minの条件下で試験片を圧縮破壊させ, その破折時の荷重を測定して, 圧縮破壊強さを求めた. その結果以下のことがわかった. 1. 新しく考案した摩耗体積測定法は, 摩耗体積を測定するのに有用であった. 2. 各種歯冠修復材料を摩耗量で乳歯と比較したところ, キャスタブルセラミックスが最も乳歯に近い値を示した. 3. 摩耗量においてシェーディングポーセレンを塗布したキャスタブルセラミックスと塗布していないものと両者に有意差は認められなかった. 4. キャスタブルセラミックスの疲労強度は, 100万回の繰り返し圧縮荷重試験後においても小児の最大咬合よりも高い値を示した. 以上の結果から, キャスタブルセラミックスは小児歯科領域において有望な歯冠修復材料であると考えられる.
1992-04-25

著者

池本博之
大阪歯大・大学院・小児歯科

小児歯科領域におけるキャスタブルセラミックスの応用に関する研究 : とくに摩耗性と圧縮疲労特性について

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