糖尿病ラット白血球の活性酸素産生に関する研究
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概要
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糖尿病患者は細菌, ウイルスあるいは真菌などによる感染症に罹患しやすく, 治療に対しても抵抗性であるが, しかし, その本態に関しては十分に解明されていない. そこで, 本研究は糖尿病における白血球の殺菌能の低下の機序を解明するために, ストレプトゾトシン (STZ) 糖尿病ラットを作製し, 白血球の産生する活性酸素の一種であるスーパーオキシド (O_2^-) 産生能, ならびにO_2^-産生能に対するインシュリン治療の影響について検討を行った. 実験にはWistar系雄性ラット (6週齢) 53匹を用いた. 5mMクエン酸緩衝液 (pH4.5) で3%濃度に溶解したSTZ (65mg/kg) を, ラットの腹腔内に投与し, 4週間後, 血糖値が300mg/dl以上に達したものをSTZ実験群 (糖尿病群) として用いた. 糖尿病群のうちインシュリン (4units/day) を連続投与したものをSTZ-インシュリン実験群とした. 対照の正常群には実験群と同一週齢のSTZ非投与ラットを用いた. 血糖値はグルコースオキシダーゼ法, インシュリン量はワンステップ酵素免疫測定法, またスーパーオキシドジスムターゼ (SOD) はNBT還元法を用いて測定した. 白血球は, 滅菌した1%グリコーゲンで誘導したラットの腹腔マクロファージを用いた. マクロファージは, グリコーゲンの腹腔内注射4日後に腹腔滲出細胞を採取し, 0.02Mリン酸緩衝生理食塩水 (pH7.2) で2回洗浄後, 1.0×10^6cells/mlの細胞濃度になるようにペニシリン, ストレプトマイシンを含有したダルベッコ・モディファイド・イーグル培養液に浮遊させ実験に用いた. なお, 腹腔滲出細胞のうちエステラーゼ活性が確認されたマクロファージは68〜86%であり, そのviabilityはトリパンブルー染色により95%以上であることを確認して実験に用いた. O_2^-産生量はPickらの方法に準じチトクロームc還元法で測定し, SODにより抑制されるチトクロームc還元量よりO_2^-産生量を算出した. O_2^-産生の刺激物質には, オプソニン化ザイモザン (OPZ), フォルボールミリステートアセテート (PMA) およびカルシウムイオノフォアA23187 (A23187) の3種類を用いた. 白血球O_2^-産生量を各群ごとに平均値と標準誤差で表わし, 各群間の有意差検定はStudent's t-testにより行い, 次の結果を得た. 血糖値は糖尿病群では正常群と比べて有意に高値を示したのに対し, 血中インシュリン値は, 有意に低値を示した. 糖尿病群のマクロファージO_2^-産生量は, OPZ, PMA, およびA23187のどの刺激においても, 正常群と比べて有意の低下 (p<0.001) が認められた. 糖尿病群にインシュリンを投与した場合, 血糖値および体重に改善がみられた. STZ-インシュリン実験群のマクロファージO_2^-産生量は糖尿病群と比べて, OPZ, PMA, およびA23187のどの刺激においても高い傾向は認められるものの有意差はなかった (p<0.1). SOD活性は糖尿病群, STZ-インシュリン実験群および正常群の間で有意差は認められなかった. 各刺激によるO_2^-産生量と血糖値との間には, それぞれ負の相関性 (各々P<0.01) が認められた. また, 各刺激によるO_2^-産生量と血中インシュリン値との間においてもそれぞれ正の相関性 (各々P<0.01) が認められた. これらの結果から, 糖尿病の易感染性の一因として白血球の殺菌能の低下がいわれるが, その機序として0_2^-産生能の低下が関与している可能性が考えられる. また, 持続的な高血糖がO_2^-産生低下をもたらす可能性があることから, 長期にわたる血糖のコントロールが重要であることが示唆された.
- 1991-08-25
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