各種根管充填剤の組織為害性に関する研究 : とくに, 練和直後から20日間の細胞毒性の消長について
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概要
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シーラーの組織為害性の消長を明らかにする目的で, 練和直後から20日間にわたってシーラーの培養細胞に与える影響を検索した. また, シーラーの構成成分であるユージノール, Zn, Agについて, それぞれの浸漬液への溶出量を測定し, シーラーの細胞毒性との関係について検討を加えた. 実験材料および方法 Canals, Tubli-Seal, CRCS, Sealapex, Dentalis KEZおよびAH26の6種類のシーラーを指示書通りに練和して作製した一定体積, 一定表面積を有するテストピースを5% NBSを含むMEM 10ml中に37℃で24時間浸漬し, 細胞に作用させる1回目浸漬液とした. 次いで, 同じテストピースを前述の培養液に24時間浸漬して2回目浸漬液を, 同様にして20回目までの浸漬液を調整した. なお, 対照にはガラスリングのみを浸漬した培養液を用いた. 1. 細胞毒性試験 継代培養後4日目のL-929細胞を前述の培養液で4×10^4 cells/mlとなるように調整し, 24穴プレートに1ml/well分注して37℃, 5% CO_2培養器中で24時間培養したのち, 培養液を前述の浸漬液と交換し, 同様に培養を行って1, 2, 4および7日目に生細胞数を計測した. なお, 細胞増殖度を算出して細胞毒性の指標とした. 2. ユージノール, ZnおよびAgの定量 ユージノールを含有する4種類のシーラーから培養液中へのユージノール溶出量をガスクロマトグラフィーで, さらに, Canals, Tubli-Seal, CRCS, SealapexおよびDentalis KEZのZn溶出量およびAH26のAg溶出量をそれぞれの浸漬液についてICP発光分光法によって定量した. 結果 1. 細胞増殖度 Canals群 : 1〜4回目浸漬液での細胞増殖度は1日目で約50%を示したが, 以後は低下して7日目では10%以下となった. 5〜11回目浸漬液での増殖度は1日目で100%に近い値を示したが, 2日目以後には約50%になった. 12〜20回目浸漬液の増殖度は各測定日で約90%前後の値を示した. Tubli-Seal群 : 1〜3回目浸漬液での細胞増殖度は1日目から低下し, 7日目には10%以下になった. 4〜13回目浸漬液では各測定日で約50%, 15〜20回目浸漬液では各測定日で100%に近い増殖度を示した. CRCS群 : 1〜4回目浸漬液での細胞増殖度は測定日ごとに低下したが, 5〜9回目浸漬液での増殖度は徐々に高くなり, 10〜12回目浸漬液では1日目から約60%, 13〜20回目浸漬液では各測定日とも100%に近い値を示した. Sealapex群 : 1〜4回目浸漬液での細胞増殖度は測定日ごとに低下した. また, 5〜10回目浸漬液での増殖度は各測定日で約50%, 11〜13回目では60〜80%, 14〜20回目浸漬液では100%に近い値を示した. Dentalis KEZ群 : 1回目浸漬液での細胞増殖度は他の実験群より高い値を示した. 7〜12回目浸漬液での増殖度は, 各測定日とも50%以上になり, 13, 14回目浸漬液では80%以上, 15〜20回目浸漬液では100%に近い値に達した. AH26群 : 1〜8回目浸漬液での細胞増殖度は各測定日で3〜20%程度であったが, 11〜15回目浸漬液では約50%に達した. 16〜20回目浸漬液での増殖度は各測定日とも100%に近い値を示した. 2. ユージノール, ZnおよびAgの溶出量 ユージノールの溶出量 : 細胞増殖の抑制を認めた浸漬液ではユージノール量は多く, 細胞増殖の抑制を認めなかった浸漬液ではユージノール量は減少していた. ZnおよびAgの溶出量 : Canals, CRCSおよびDentalis KEZでは, 細胞増殖の抑制を認めた浸漬液より認めなかった浸漬液でZn量が増加していた. Tubli-SealおよびSealapexでは, Zn量に変化はなかった. AH26では, 浸漬夜中のAg量はいずれも0.8μg/ml以下であった.
- 大阪歯科学会の論文
- 1991-04-25
著者
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