交感神経活動を指標とした口腔外科手術, 麻酔侵襲の評価に関する臨床的研究
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概要
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口腔外科手術に伴う交感神経活動の変化を観察し, それらを指標として手術侵襲にかかわる諸要因および麻酔の影響を検討し, 手術, 麻酔侵襲の評価を行うことを目的とした. 1. 対象と方法 1) 口腔外科手術における交感神経活動の変動 笑気, 酸素にニューロレプトアナルゲジアを併用した全身麻酔 (以下GO-NLA麻酔) 下に行われた頚部郭清術を含む上顎切除術, 下顎区域切除術, 舌切除術などの口腔癌手術10例につき, 手術前後の尿中17-OHCS排泄量, カテコールアミン排泄量の変化を測定した. 2) 口腔外科手術侵襲の指標としてのカテコールアミンの検討 全身麻酔下に歯科治療を受ける患者10名 (以下歯科治療群) と手術室で口腔外科手術を受ける10名 (以下口腔外科手術群) につき, 手術開始1時間30分後に血中カテコールアミンを測定し両群を比較した. 3) 尿中アドレナリン, ノルアドレナリン, ノルアドレナリン排泄量と手術時諸要因の関連GO-NLA麻酔下に行われた口腔外科手術92例につき手術終了後1時間の尿中カテコールアミン排泄量を測定し, 手術時の諸要因として患者の年齢, 手術時間, 出血量, GO-NLA麻酔におけるフェンタニール投与量 (μg/kg/hr) との関連を統計的に観察した. 4) 局所麻酔下と全身麻酔下での口腔外科手術の交感神経活動の比較 上顎嚢胞根治術を受ける20名の患者を対象に, 局所麻酔で手術が行われた群 (以下局麻群) 10名, 全身麻酔 (局所麻酔併用) で手術が行われた群 (以下全麻群) 10名の手術中の血中カテコールアミンと血糖値を測定し両群を比較した. 2. 結果 1) 口腔癌手術の尿中17-OHCS排泄量は, 術後2日間は高値を示し, 以後漸減した. また, 尿中カテコールアミン排泄量は手術中に上昇し手術終了時に最高値を示すが, 手術翌日には大きく低下した. 2) 歯科治療群に比し口腔外科手術群は, 高い血中ノルアドレナリン値を示した. 3) 手術後1時間の尿中ノルアドレナリン排泄量を指標に手術時の諸要因を検討した結果, 出血量と年齢に高い相関を認めた. さらに年齢と出血量およびノルアドレナリン排泄量との関連を検討した結果, 年齢60歳以上で600g以上の出血量の手術に高度のノルアドレナリン排泄が認められた. 手術時間については, 4時間以上の群に高いノルアドレナリン排泄量がみられた. アドレナリンについては各因子に関連が認められなかった. 4) 上顎嚢胞根治術で, 全麻群と局麻群を比較するとアドレナリンと血糖値においては差を認めなかったが, ノルアドレナリンについては執刀90分後に局麻群が高値を示した。3. 結論 交感神経活動を指標に口腔外科の手術, 麻酔侵襲を評価すれば, 年齢60歳以上で出血量600g以上, 手術時間では4時間以上の手術が大きな侵襲となる. また, 麻酔の因子は, 手術に比較して交感神経活動におよぼす影響は少ないが, 侵襲の小さい手術では, 局所麻酔を併用した全身麻酔は術中の交感神経活動をよく抑制する.
- 1990-08-25
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