Prevotella intermedia MA1-V2のβ-lactam薬耐性におけるβ-lactamaseの役割(大阪歯科大学大学院歯学研究科博士(歯学)学位論文内容要旨および論文審査結果要旨の公表)
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概要
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β-lactam薬耐性株は, 種々の歯性感染症由来細菌から分離され, その多くはβ-lactamase産生株である.現在, 口腔由来嫌気性グラム陰性捍菌におけるβ-lactam薬耐性機構にこの酵素が関与することは推定されているが, 生菌中すなわちペリプラズム間隙中β-lactamaseの耐性のおける直接的な役割についてはほとんど検討されていない.本研究では, β-lactam薬高度耐性Prevotella indtermedia MA1-V2(閉鎖性膿瘍由来)のβ-lactam薬耐性におけるβ-lactamaseの役割を明らかにするために, ペリプラズム間隙中β-lactamaseの活性阻害と, 菌の増殖および最小発育阻止濃度(MIC)の関係, さらに, 外膜透過性障害および薬剤の排出について検討した.供試薬剤は, 阻害剤としてclavulanic acid(CVA), sul-bactam(SBT), tazobactam(TAZ)を, β-lactam薬としてpiperacillin(PIPC), cefazolin(CEZ), cefteram(CFTM)を用いた.ペリプラズム間隙中β-lactamase活性の阻害率(阻害剤無添加時の活性値-阻害剤添加時の活性値 / 阻害剤無添加時の活性値×100)は, 0.25〜8μg / mLの各阻害剤を添加後6時間嫌気培養した場合, それぞれCVA57〜80%, SBT73〜88%, TAZ64〜88%であった.ついで, 対数増殖期中期(6時間培養後)に阻害剤(CVAとTAZ:4μg / mL, SBT:8μg / mL)のみで0.5時間処理した場合の阻害率は, CVA88%, SBT90%, TAZ86%, 阻害剤とβ-lactam薬(PIPCとCFTM:16μg / mL, CEZ:8μg / mL)を併用した場合のそれは, 80〜96%であり, ペリプラズム間隙中の酵素は阻害剤とすみやかに結合して阻害された.さらに, ペリプラズム間隙中酵素活性の阻害の影響を知るために, 単独では増殖に影響のない濃度の阻害剤とβ-lactam薬を併用して生菌数を測定すると, 薬剤添加9時間後にすべての組み合せで生菌数は減少した.また, 阻害剤(CVAとTAZ:0.5μg / mL, SBT:1μg / mL)併用時におけるβ-lactam薬のMICを寒天平板希釈法(10^6CFU / mL)で測定すると, PIPC, CEZおよびCFTM単独のMIC128, 64および128μg / mLに比べて, それぞれのMICは1 / 512〜1 / 64および1 / 128〜1 / 16および1 / 128の値に低下した.これらの事実は, ペリプラズム間隙中で阻害剤がすみやかにβ-lactamaseと結合し, その結果, β-lactam薬本来の抗菌力が発揮され, 生菌数やMICが減少したことを示している.つぎに, 供試菌株の外膜透過性障害をethylenediamine tetraacetic acid disodium salt(EDTA)を用いて, β-lactam薬のMICを測定して検討した.その結果, EDTAの有無にかかわらずβ-lactam薬のMICは, ほとんどの組み合せで同じであった.薬剤の排出を単独では増殖に影響のないcarbonyl cyanide m-chlorophenyl-hydrazone(CCCP)とβ-lactam薬を併用して生菌数を測定した.その結果, CCCP添加によって増殖が若干遅延する傾向がみられたが, 接種24時間後の生菌数は, 薬剤無添加の場合とほとんど変わらなかった.これらの事実は, 本菌株のβ-lactam薬耐性には外膜透過性障害あるいは薬剤の排出機構が関与しないことを示唆している.以上の結果より, Prevotella intermedia MA1-V2のβ-lactam薬耐性機構では, β-lactamaseが最も重要な耐性因子であると推定される.
- 大阪歯科学会の論文
- 2000-06-25
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