Prevotella intermediaのstreptomycinおよびgentamicin耐性における薬剤排出機構の関与(大阪歯科大学大学院歯学研究科博士(歯学)学位論文内容要旨および論文審査結果要旨の公表)
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概要
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種々の歯性感染症や口腔常在菌叢から分離される嫌気性グラム陰性桿菌のある株がβ-lactam薬耐性を示し, 症状を増悪させることは多くの報告で明らかにされている.最近の化学療法ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌や緑膿菌のβ-lactam薬耐性菌感染症の治療にβ-lactam薬とアミノグリコシドまたは, ニューキノロン薬が併用され治療効果をあげている.このことはアミノグリコシド耐性機構を解析する必要性を示唆している.しかし, 嫌気性グラム陰性桿菌のアミノグリコシドに対する薬剤感受性は元来低く, その機構として細胞膜の能動輸送が嫌気条件下で阻害されることが考えられているが, ほとんど研究されていない.最近, 好気性あるいは嫌気性グラム陰性桿菌のアミノグリコシドやニューキノロン薬耐性に薬剤排出が関与することが明らかにされつつある.本研究では, 嫌気性グラム陰性桿菌のPrevotella inter-media MA1(MA1)とMA1-V2(MA1-V2)のstrep-tomycin(SM)とgentamicin(GM)耐性(アミノグリコシド耐性)に薬剤排出機構が関与するか否かを検討した.ついで, 排出障害に伴うアミノグリコシドの蓄積による供試菌の増殖抑制を生菌数と電子顕微鏡で観察した.供試菌をcarbonyl cyanide m-chlodrophenylhydrazone(CCCP, 10μg / mL)とSMあるいはGMで処理すると, 両菌株ともSMあるいはGM単独に比べて増殖は0.33〜0.52に抑制された.CCCPとSM添加によって, 増殖の抑制された接種2時間後のSMの細胞内蓄積量をバイオアッセイで測定し, 単独の場合と比較すると, 両菌株とも2.7〜3.2倍に増加したが, GMの場合, 差がみられなかった.MA1に対するSMとGMの最小発育阻止濃度(MIC)はCCCP添加によって無添加の1 / 64〜1 / 8, MA1-V2に対するそれは1 / 32から1 / 16に減少した.また, CCCPとSMあるいはGM併用時に増殖抑制が認められた時の電子顕微鏡所見では, 細胞質のリボソーム顆粒の減少に伴う細胞分裂の停止と細胞膨潤像が認められた.CCCPとSMあるいはGM併用時の生菌数を測定すると両菌株ともに生菌数は薬剤添加時と接種24時間後でほとんど同じであった.これらの事実は, CCCPによって細胞質からのSMとGMの排出が阻止された結果, 増殖抑制とMICの減少がみられることを示唆している.つぎに, MA1-V2をethylendiamine tetraacetic acid diaodium salt(EDTA)とSMあるいはGMで処理するとEDTA無添加に比べて, 両薬剤のMICは1 / 32から1 / 16に減少したが, MA1では, この現象はみられなかった.以上のようにCCCP添加による増殖抑制とMICの減少は, Prevotella intermediaのアミノグリコシド耐性に薬剤排出機構が関与していることを示唆している.また, EDTA添加によるMICの減少から, MA1-V2では, 外膜透過障害も本耐性に関与するものと考えられる.
- 大阪歯科学会の論文
- 2000-06-25
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