閉口運動の速度調節に関与する咬筋筋活動の分析
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概要
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本研究は下顎閉口速度の調節と収筋の関係を明らかにすることを目的とし, 健常有歯顎者8名で下顎頭が関節結節を越えない範囲の開口量を保ちながら, 仕意のリズム(NOC)と, 可及的に速いリズム(MOC)の開閉口運動を行わせた. Mandibular kinesiographのvertical motion velocity曲線(velocity曲線)を基準とし, 加速相, 急減速相, 緩減速相とに分け, velocity曲線の観察および両側咬筋浅部中央(Mm)と両側顎二腹筋前腹(Dig)のelectromyogram (EMG)の計測を行った結果, 以下の知見を得た. 1)閉口相におけるvelocity曲線には2つのパターンと, その中間的なパターンに分けられ, それぞれは, その速度調節の方法にも特徴を示し, また個人によってそのパターンは一定であった. 2)閉口相最大速度の発現する位置は, MOCとNOCの間で時間的にも空間的にも変化しないので, 下顎運動中の位置感覚に応答する末梢性の感覚受容器の影響が考えられた. 3) MOCはNOCと同程度の速度を減少させ, 巧みな速度調節機構の存在が示唆された. 4)緩減速相では上下顎の歯の接触に備えて, Mm平均筋活動量を減少させていると推察され, また閉口相中の速度の有意な増減に対応して, Mm平均筋活動量も有意に増減するが, Dig平均筋活動量は変化しなかったことから, 閉口相中の速度変化はMmが強く関与していることが明らかとなった. 5)全波整流後に左右加算したMm EMG波形をスムージングすると, velocity曲線に酷似した曲線となリ, また両者には高い相関が認められ, さらにvelocity曲線の減速相でみられる複雑な減速率の増減にわずかに先行して, 鋭い活動電位がその全波整流したMm波形に観察されたことから, 閉口相中の速度変化をMmが司ることが, その波形からも確認できた. 以上の結果より, 収筋筋活動が下顎閉口相の速度調節に深く関与することが明らかとなった.
- 1999-03-25