可塑剤の添加が暫間修復用レジンの硬化特性に及ぼす影響
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概要
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暫間修復物の作製には, 常温重合レジンを口腔内で硬化させる手法が広く用いられているが, 鼓形空隙などのアンダーカットによって硬化体が撤去不能になることがあるため, その操作には多くの注意と経験が必要である. 成形操作中は多少のアンダーカットが存在しても撤去可能なくらいの低い弾性率を示し, 成形終了後は十分な機械的強度をもつレジンを使用すれば, 容易に暫間修復物の作製が可能であり, 術者の作業負担が軽減されると考えられる. 今回, 暫間修復物の作製に適したレジンの操作性を評価するための基礎的研究として, レジンへの可塑剤の添加が硬化特性に与える影響について検討した. 実験のために, 粉液タイプのレジンを調整した(以下, 試作レジンと略す.). 粉末の主成分は polyethyl methacrylateで, 液の主成分は ethylene glycol dimethacrylateに, 可塑剤である dibutyl phthalateを0, 10, 20, 30, 40%添加したものの5種である. 重合触媒として, 光重合触媒と化学重合触媒の両方を加えている. 比較対照のため, UNIFAST(GC社), UNIFAST II(GC社)およびADFA (SHOFU社)も実験に供した. 実験1として, レジンの圧縮強度と圧縮弾性率の経時的変化を測定した. 室内で練和したレジンをテフロンモールド(内径3mm, 高さ6mm)に墳塞し, 恒温恒湿槽中(32℃, 92%)で硬化させ, 練和開始から5, 10, 30分時の圧縮強度と圧縮弾性率を万能試験機にて測定した. 実験2として, レジンの硬化特性をより詳細に検討するため, 反発硬さの経時的変化を測定した. ガラス練板中央にナイロン製モールド(内径13.0mm, 高さ2.5mm)を置き, 室温で練和したレジンを墳塞, 恒温恒湿槽中(32℃, 92%)でレジンを硬化させた. 測定時には試料をガラス練板ごと水平な台に置き, 200mmの高さからステンレス球(直径3/8 inch)をレジンの上に落とし, その反発高さを写真撮影によって測定した. 測定時間は, 練和開始から10分後(対照は7分)までは30秒ごとに, さらに30分後に測定した. 実験3として, 臨床的な操作性を確認するために, アンダーカットからの引き抜き最大荷重の経時的変化を測定した(以下, 引き抜き試験と略す.). 真鍮ブロックに溝(長さ10.0mm, 深さ5.0mm, 底の幅5.2mm, 上縁の幅5.0mm)を彫り込んだものをモールドとした. 32℃に調整したモールド内に室温で練和したレジンを填塞し, 練和開始から10分後(対照は7分)まで1分ごとにモールドからの最大引き抜き荷重を測定した. 圧縮強度試験の結果, 他のレジンが1,000kgf/cm^2以上の圧縮強度を示したのに対し, 可塑剤を30%以上添加したレジンは, 200から500kgf/cm^2前後と圧縮強度が不足することが示された. 反発硬さの測定では, ある瞬間の硬さを知ることができるため, レジンの硬化特性をより詳細に観察することができた. 対照が練和後3〜4分で急激に硬化したのに対し, 可塑剤を添加したレジンは緩徐に硬化した. 可塑剤の添加によって, 口腔内から撤去する期間に余裕ができると考えられる. 引き抜き試験では, 試作レジンは重合収縮の影響を大きく受け, 練和7分後以降, 最大引き抜き荷重が低下傾向を示した. 以上の結果, 可塑剤の添加は20%が適当であること. また, 可塑剤の添加により暫間修復用レジンの硬化特性は大きく影響を受け, 臨床的に有用な操作性が与えられることが判明した.
- 1996-09-25
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