Prevotella intermedia と Prevotella nigrescens の溶血活性について
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概要
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多くの細菌が種々の hemolysinを産生することはよく知られており, hemolysin活性を獲得することによって病原性が増すことがEscherichia coliで明らかにされている. 口腔領域の細菌においても, Porphyromonas gingivalis, Fusobacterium nucleatum, Prevotella intermedia などが hemolysinを産生する. Hemolysinのあるものは赤血球ばかりでなく, 炎症細胞や上皮細胞を含むほかの細胞を溶解させる. とくにSerratia の hemolysinは, 肥満細胞や好中球から化学伝達因子を遊離させ, in vivoでの血管透過性増大, 浮腫形成および顆粒球の集積を促進させると考えられている. 一方, 種々の歯性感染症で高頻度に分離される P. intermedia や P. nigrescensは, その発育に鉄イオンを必要とすることが Gibbonsらによって明らかにされている. 最近 Leungらは, P. intermedia が鉄イオンとして hemoglobin や heminを利用することができるが, globinを利用することができないことおよび biotinでラベルしたヒト hemoglobinを用いて P. intermedia の菌体表層に hemoglobinが特異的に結合することを証明している. また, P. intermedia や P. nigrescensが種々の菌体表層構造を有し, 赤血球凝集活性や上皮細胞への付着性に関連することは, Leungらや藤田らによって示されている. そのなかで彼らは, P. intermedia や P. nigrescensの多くが線毛の有無に関わりなく活性の異なる赤血球凝集活性を示すことを報告している. さらに, Beemらは P. intermedia Strain 17, 9336および ATCC 25611に溶血活性があることを明らかにしている. これらの事実を考え併せると, P. intermedia や P. nigrescensはin vivoで赤血球を凝集したのち溶血させ, 遊出した hemoglobinを利用して増殖している可能性が強い. したがって, 本実験では臨床から分離したこれらの細菌の溶血活性を検討した. その結果, 多くの菌株に β-溶血活性が認められた. 溶血環の広い菌株を選んで2, 4, 6および8日間血液寒天培地で培養後, 定量的に溶血活性を測定した結果, いずれの菌株とも6日間培養後の値が最も高かった. 溶血活性は菌液に含まれる菌量の増加とともに増加した. この結果は, P. intermedia や P. nigrescensによる溶血が菌体表層と赤血球との特異的な相互作用であることを示唆している. 80℃, 10分間の前処理で溶血活性が減少するものと増加するものとがみられた. したがって, 両菌種とも菌株によって hemolysinの性状は異なる可能性が考えられる. Trypsin, chymotrypsin および proteaseの前処理で供試菌株の溶血活性は増加した. Hyaluronidase, β-glucosidaseおよびβ-galactosidaseの前処理で活性に大きな変化は認められなかった. しかし, lysozymeの前処理でほとんどの菌株の溶血活性は減少した. P. nigrescens strain E4を用いて hemolysinの分離を試みた結果, E4 hemolysinの活性は, 機械的剪断後, 35,000rpm, 2時間遠心した上清に認められた. そこで Sepharose CL-4 Bに供した結果, hemolysin活性は第1ピークにのみみられた. E4 hemolysin (73.0%)の活性は60℃, 10分間の加熱で減少し始め, 100℃, 10分間の加熱で残余の活性はさらに6.7%まで減少した. また, chymotrypsin処理で減少したことから, E4 hemolysinは本質的にタンパクであると考えられる. いずれにせよ, 黒色色素を産生する P. intermedia, P. nigrescensとも, ほとんどの菌株がヒト赤血球に対する溶血活性を示したことから, 両菌種ともin vivoで赤血球と凝集し, 溶血させ, みずからの増殖のための hemoglobinを獲得していると考えられる.
- 1996-09-25
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