前方運動ガイド傾斜角に対応する開口筋筋活動と顆頭運動の分析
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概要
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下顎の前方滑走運動は, 前方指導要素の前歯ガイドと後方指導要素の顆頭部, さらに咀嚼筋筋活動などにより相互に関連し, また影響し合いながら遂行されている. 日常臨床において前歯部ガイドを失った症例を治療するとき, 適切なガイドを設定することは補綴学的に重要なことである. また, 現在まで前歯ガイドの傾斜角は矢状顆路傾斜度よりも約10゜から25゜急傾斜であることが望ましいと報告されている. しかし, 前方および後方指導要素と筋活動の3者の関係から総合的に分析した研究は見当たらない. そこで有歯顎者を対象として実験的に前方運動ガイドの傾斜角を変化させたとさの外側翼突筋下頭(Lpt)と顎二腹筋前腹(Dig)の筋活動を観察し, 切歯点と顆頭運動を含めて前方運動ガイドの傾斜角の変化に対応する運動論的なメカニズムを分析することを目的として本実験を行った. 被験者は, 顎口腔機能に異常を認めない健常有歯顎者男子5名(平均24.8歳)とし, 前方運動ガイドの変化が筋活動に及ぼす影響を知る目的で片側の Lptと Digの筋活動の変化を観察した. Lptは教室で開発した電極間距離を1.5mmに規定した双極型同芯針電極を使用し口内法で, Digは直径0.08mmの fine wireを皮膚表面に挿入し双極誘導した. 前方運動ガイド傾斜角を変化させるための実験装置は, 半調節性咬合器上で上顎には口蓋中央にガイドピンを付与したシーネを, 下顎にはガイドピンを沿わせ前方運動を規定するガイドグループを取り付けたシーネを作製した. 前方運動ガイド傾斜角は, ガイドグループの傾き(ガイド角)で変化させ, フランクフルト平面を基準とし平面に平行(0゜)から下前方方向に80゜まで20゜刻みの5段階とした. また各角度でガイドピンの運動開始位置は一定とし, 移動量は9mmとした. 被験運動は上顎のガイドピンが下顎のガイドグループ上を前後に滑走させる往復運動とした. 切歯点運動はMKG K6を用いて筋電図とともに記録した. 計測は往復運動中でガイドピンがガイドグループ上を前方滑走する区間を対象とした. まず計測区間の前方運動に要した時間を計測した. 次に切歯点ではこの区間のMKG基準平面に対する角度と, 筋電図は筋活動の積分値を各ガイド角ごとに計測した. 次にガイド角の変化が顆頭運動に及ぼす影響を観察する目的でコンピュータアキシオグラフ(GAMMA社製)を用いて顆頭滑走量と回転量を計測した. ナイト角の増加について前方運動に要した時間は1.6秒前後と変化しなかった. 実験的にガイド角に対応する切歯点の角度は閉口方向に7゜から開口方向に107゜と広範囲であった. Lptの筋活動量はガイド角の増加に従って増加ガイド角20゜から40゜付近で最大値を示したのち減少し, Digではガイド角の増加とともに筋活動量は増加した. 顆頭滑走量はガイド角の増加によって増加したのち, 60゜くらいから減少傾向をとった. また回転量はガイド角の増加に対応して閉口方向に4.7゜から開口方向に4.3゜まで変化しガイド角20゜から40゜の間で閉口方向から開口方向の回転に変化した. ガイド角の変化における筋活動量と切歯点および顆頭運動の変化傾向の分析から Lptの筋活動は顆頭滑走量と, Digは切歯点の角度および顆頭回転量と相関がみられた. また顆頭滑走量と回転量の絶対値に負の相関がみられた. 以上より下顎の前方滑走運動は顆頭の滑走と回転によって対応しそれに呼応した Lptと Digの巧妙な協調活動が広範囲な前歯ガイド傾斜角を許容していることが明らかになった.
- 1996-06-25
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