培養ヒト歯根膜細胞の増殖特性について
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概要
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歯周疾患によって喪失した歯周組織の再生には, 歯根膜由来細胞の役割がとくに重要と考えられ, 近年, その細胞特性解明に向け, 種々の検索が試みられている. 先に重山は, 歯根膜組織の増殖能に関する部位特異性を検索し, 歯根膜の骨側, 中央部およびセメント質側各部で, 細胞分裂能が異なることを示した. しかしながら, その研究は歯根膜内におけるDNA合成細胞の分布を組織学的に計測したものであり, 歯根膜各部組織由来細胞の増殖能を直接比較したものではない. 今回著者らは, 歯根膜骨側, 中央部, セメント質側組織から細胞を分離し, それら分離細胞の増殖特性を比較検討した. とくに本研究では, 細胞増殖特性のなかでも基本的事項と考えられる細胞の血清要求量および増殖能について調べた. 加えて, 継代が血清要求量や増殖能に及ぼす影響についても併せて検索した. 各部歯根膜組織は, 26歳男性の半埋伏下顎右側第三大臼歯部, および13歳女性の歯列矯正上便宜抜去した下顎右側第一小臼歯部から採取した. 各部歯根膜組織のうち骨側歯根膜組織は, 被験歯抜歯後, 抜歯窩内壁に付着した歯根膜組織を両頭鋭匙にて掻爬, 採取した. 中央部歯根膜は, 抜去歯根面を鈍なスケーラーで掻爬し, 採取した. 続いて, 鋭利なスケーラーで, 残存歯根膜を硬組織ごと掻爬し, この組織片をセメント質側歯根膜とした. さらに, 第三大臼歯抜歯時に, 同部の歯肉結合組織ならびに歯槽骨を採取した歯根膜各部組織片, 歯肉組織片, 骨組織片は, 抗生物質溶液で滅菌後, 35mmプラスチック培養シャーレに貼りつけ, 10% FBS含有ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を培養液として初代培養した. 実験には継代数5代および15代の培養細胞を用いた. 実験開始時に, 各細胞の形態観察と飽和密度の計測を行った. その後, 歯根膜各部由来細胞の血清要求量および増殖能を測定するため, 5代および15代の各細胞をFBS 10%含有 DMEMに浮遊させ, 24ウェル組織培養プレートの各ウエルに2×10^4個ずつ植え込んだ. これらプレート中の細胞をインキュベートし, 細胞がプレート底面に貼りついたのち, 各ウエルにFBS濃度5%, 10%あるいは20%のDMEMを注入し, この時点を培養0日目とした. 培養5および10日目に, 血球計算盤にて生細胞数を計測した. 細胞数の計測は3ウエルを1群とした triplicateで行った. また, 歯根膜各部由来細胞と比較のため歯肉結合組織ならびに歯槽骨由来細胞の血清要求量も併せて測定した. なお, 細胞増殖能の比較は, 歯根膜各部由来細胞が最も良く増殖した血清濃度20%のものに関して行った. その結果, 今回分離したすべての細胞に共通して, 血清濃度が高いほど細胞が活発に増殖し, 20%で最も良く増殖した血清濃度20%での各部細胞の増殖能を比較すると, 最大は歯根膜骨側由来細胞で, 以下, 中央部, セメント質側由来細胞の順であった. 血清要求量については各細胞それぞれ特徴的であった. 継代5代歯根膜骨側由来細胞においては血清要求量がさほど高くなく, 培養5日間では血清濃度10%でも十分に増殖した. しかし, 継代15代の骨側由来細胞では, 高濃度血清を必要とした. 一方, 継代5代, 15代の歯根膜中央部とセメント質側由来細胞で良好な細胞増殖を得るには, 培養10日間を通じ血清濃度20%が要求され, 骨側由来細胞に比較して血清要求量が高かった. また, 継代5代の歯槽骨由来細胞の血清要求量の動態は, 歯根膜骨由来細胞と類似していた. 以上のことから, 本研究結果は, 同じ歯根膜内でも部位により細胞の増殖特性が異なることを示唆した.
- 1995-06-25
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