ライオンの顎動脈怪網
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概要
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Takemura (1982)は家ネコ(Felis catus)の怪網を詳細に観察し, これを顎動脈怪網と呼称した. また, 竹村と謝(1992)はライオン(Panthera leo)の外頸動脈の分枝様相を報告し, ライオンの内頸動脈は退化し, 顎動脈には怪網がみられることを明らかにした. 著者らはライオンの怪網とその輸入および輸出動脈枝を観察し, その所見をネコ科のものと比較解剖学的考察を試みた. 材料および方法 ライオン4頭の頭部を用い, アクリル樹脂脈管注入法(1952, 1955)により6側の頸動脈系の鋳型標本と2側のフォルマリン浸漬固定剖検標本を作製した. これらを用いて観察と計測を行った. 観察結果 顎動脈は下顎枝後縁の下顎角側2/5の高さで前内側方に曲がり, 下歯槽動脈, 咬筋動脈, 後深側頭動脈を派出していた. 上記3分枝から怪網への枝は観察されなかった. ついで顎動脈は外側翼突筋前外側, 下顎神経上方を前上内側方に走り, 中硬膜動脈を派出したのち怪網の後外側端に達していた. 前深側頭動脈は顎動脈から直接起始し,怪網の前外側縁を形成していた. 怪網は側頭下窩, 眼窩裂のすぐ外側に位置し, 後, 外側, 下と前内側の4つの面と後外側, 前下, 前上端と頭蓋腔内の後内側端の4つの角をもち, 下面を底とし前上端を頂点とした三角錐状を呈していた. また, 上顎神経は怪網の後縁中央から前やや外側方へ, 怪網内では顎動脈と伴走することなく貫き, 同神経周囲は怪網構成動脈枝によって筒状の上顎神経管が形成されていた. 怪網を構成する諸枝の動脈源は, 内側怪網枝, 快網内枝, 前怪網枝を観察した. しかし, いずれの枝も内側方へ派出するため顎動脈全周を囲んでいないので外側方から顎動脈の走行が観察された. 内側怪網枝は中硬膜動脈と共通幹で起始し, 顎動脈の内側を前内側走して怪網後端に達し, 怪網の後面, 後下縁, 上顎神経管の後半部を構成していた. 怪網内枝は怪網の下外側縁を通過する顎動脈から起始し, 上怪網内枝と下怪網内枝が認められた. 前者は怪網の外側面, 怪網内部ならびに上顎神経管上部を構成し吻合動脈へ移行していた. 後者は怪網の下面と上顎神経管の下部を構成し吻合動脈へ移行していたが, 一部は怪網間動脈の動脈源となっていた. 前怪網枝は前深側頭動脈の後壁から起こり, 怪網の前縁と外側面の前方1/3を構成したのち吻合動脈ヘ移行していた. 怪細からの輸出動脈枝としては, 吻合動脈, 外篩骨動脈, 眼筋枝, 硬膜枝, 涙腺動脈, 怪網間動脈, 外篩骨動脈との文通枝, 側頭筋枝を観察した. 考察および結論 ライオンに認められた怪網は家ネコのものと同様顎動脈怪網であった. この怪網が両種で様相を異にする点は, ライオンの顎動脈は外側翼突筋の外側を通過することと, 家ネコの外側怪網枝に相当する怪網構成輸入動脈枝が存在せず, 顎動脈より外側では怪網が形成されないことであった. しかし, 怪網全体像としては, 両者はほぼ相似形の形態を呈していた. 輸出動脈枝は両者間に相違が認められなかった. その他, 類似点として, 吻合動脈が両者とも極めて発達し, それが眼窩裂を通過して頭蓋腔内に入り, 退化し機能を失った内頸動脈に代わって脳へ多量の血液を供給していたことであった.
- 1995-06-25
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