抜歯後即時植立インプラント体周囲の骨形成と微細血管構築の変化に関する実験的研究
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概要
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2回法インプラント術式において, 施術前の抜歯が必要な症例では抜歯窩の十分な治癒ののち植立し, 安静期間をおいて上部構造を作製する. この術式では最終補綴治療終了までにかなり長い期間が必要となる. そこで抜歯直後の抜歯窩にインプラント体を植立すれば, 抜歯窩の治癒とインプラント体の骨接合の獲得が並行して行われ, 全治療期間の短縮を図れる. 本研究は抜歯直後インプラント体を植立した実験例について, 骨形成と微細血管構築の変化を観察した. 材料および方法 成ニホンザルの片側下顎臼歯を抜去後約3か月間以上治癒経過したのち反対側臼歯を抜歯した. この抜歯直後に両側ともに IMZ implant (以下インプラント体と呼ぶ.)を植立した. 植立後, 2, 4, 8, 12週に頸動脈系にアクリル樹脂を注入し, 骨・微細血管鋳型標本を作製して走査電子顕微鏡にて, また灌流固定後エポキシ樹脂包埋し, 細切してインプラント体を溶解したのち, 再樹脂包埋して超薄切片として透過電子顕微鏡にて観察した. 結果 通常植立群: 術後2週ではインプラント体中央部で既存骨骨小材間に形成された新生骨がインプラント体に接していたが, 底部に向かうほど新生骨の形成は減少していた. 術後4週では新生骨が増加し, 体全局が新生骨で囲まれ, これと体とは間隙なく接していた. 術後8週と12週では体全局に骨の付着がみられ, 間隙なく緊密に接していた. 即時植立群: 術後2週ではインプラント体中央部では既存骨と新生骨ならびに体との間に一層の毛細血管網が認められたが, 底部近くでは新生骨はインプラント体表面に接着しつつあるようにみられた. 術後4週では体のほぼ全周が新生骨小材で被われ始めていた. 体・骨界面は新生骨が体表面と接着しつつあるようにみられた. 術後8週では体全局に骨が接し, とくに体中央部ではより緊密に接し, 骨小材も太い. 界面では新生骨がインプラント体によく付着して境界が不明瞭になっていた. 術後12週では体全局はほぼ新生骨によって取り囲まれていた. 界面は体と新生骨の境界が不明瞭となり, 体表面から不規則方向ヘコラーゲン線維が認められ, 骨とインプラント体表面との接着が確認できた. 考察 本研究に用いたIMZインプラント体は純チタニウム表面にチタニウム・プラズマスプレーコーティングされており, 基本的にはチタニウムインプラントとしてより級密な骨接合を期待している. 抜歯後即時植立の場合, 新生骨形成は窩口側と高底側とでは抜歯窩の治癒と, インプラント体通常植立時の骨形成が同時に並行して進行すると考えられる. 実験結果からインプラント体植立後の骨性治癒に要する期間は通常植立時よりもやや遅れることになるが, この方法は抜歯後の骨吸収抑制と骨接合が同時に獲得できる利点があり, インプラント術における総治療時間は幾分短縮できるものと考えられる. インプラント体周囲に新生骨が形成されると, 毛細血管網は体表面から離れ, 新生骨は次第に体表面の微少な凹凸を埋めて体と骨の境界が不明瞭になるまで接着し, 通常植立例とほぼ同じになる. このとき体表面にコラーゲン線維が認められるので本インプラント体の粗造なチタニウム表面には新生骨のより良好な接着が獲得されていると考えられる. 結論 インプラント体の抜歯後即時植立を行っても, 12週経過すれば通常植立の場合と大差が認められず, また体と骨の接着も確認でき, インプラント施術の全治療期間の短縮が可能であることが示唆された.
- 1995-06-25
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