下顎位の保持にかかわる外側翼突筋下頭の筋活動について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
下顎位は, 中枢神経ならびに末梢神経の協調的な働きによって, 顎関節, 咀嚼筋をはじめとする頭領部の筋群および咬合などの顎口腔系構成要素が制御されて決定される. 外側翼突筋は顎関節部に付着することから, 顎関節顆頭の運動に直接関与するといわれ, 従来から解剖学的および生理学的検討が行われてきた. とくに近年, 外側翼突筋下頭筋活動についての研究から, その機能的意義が報告されている. しかし, 従来の本筋の筋電図学的研究は運動時における観察が大部分で, 下顎位の変化に伴う筋活動を比較検討したものは少なく, さらに従来の研究では下顎位を切歯点でとらえており, 下顎変位時における顆頭点の位置と筋活動の関係について報告したものはみあたらない. そこで, 本研究は, 下顎位の保持に重要な役割を果たすと考えられる外側翼突筋下頭を対象として, 下顎位を実験的に水平および垂直方向に変化させ, 顆頭点および切歯点の移動量と各下顎位に対応する外側翼突筋下頭の筋活動との関連を定量的に分析することによって, 下顎位の保持にかかわる外側翼突筋下頭の働きを明らかにすることを目的とした. 被験者は, 個性正常咬合を有し顎口腔系に自覚的および他覚的に異常を認めない男性5名である. 顆頭点での下顎位の測定は, 顆頭部外側に設置した近赤外線発光ダイオード(LED)からの信号を半導体位置センサ(PSD)を用いて検出することによって行った. 切歯点での下顎位の測定には, 下顎運動描記装置MKG K6システムを用いた. 実験の対象となる被験筋は, 右側外側翼突筋下頭で, 筋電図の誘導は同心型針電極を用い, 口内法で行った. 実験は, すべてシールドルーム内で行い, 被験者に以下の条件で下顎を保持させた. 実験1: 前方運動路, 対側側方運動路および習慣的開閉口路に沿って段階的に下顎を数秒間保持させた. 実験2: 咬頭嵌合位を基準として下顎を任意に変位させて, それぞれの下顎位で数秒間保持させた. なお, 下顎位の保持中は, 被験者に可及的に咬みしめを行わないように指示した. EMG波形ならびに下顎位のPSDおよびMKG波形は, デジタル変換を行い, パーソナルコンピュータに取り込み, 分析を行った. その結果, 以下のことが明らかとなった. 1.前方運動路, 対側側方運動路および習慣的開閉口運動路に沿って段階的に下顎位を保持したとき, 顆頭点ならびに切歯点の移動量が増加するに従って, 外側翼突筋下頭筋活動量は1%の危険率で有意な上昇を示した. 2.移動量増加に伴う外側翼突筋下頭筋活動量の上昇傾向は, 運動路間で比較すると顆頭点では有意な差は認められなかった. 3.咬頭嵌合位を基準として下顎位を保持させたところ, 下顎が変位しているにもかかわらず外側翼突筋下頭に有意な活動が認められない範囲が存在した. その範囲は, 顆頭点では咬頭嵌合位よりも前方に1.25mm, 下方に0.96mm, 移動量は1.20mmであった. 以上の結果から, 下顎保持時の外側翼突筋下頭の筋活動は運動の種類に影響を受けず, その下顎位での顆頭点移動量と密接な関係をもつことが明らかとなった.
- 1995-02-25
論文 | ランダム
- Development and review of the validity of an “instrumental activities of daily living test” ( IADL test ) performed as a desk evaluation of patients with Alzheimer’s type of dementia
- 保育士養成機関における「施設実習」の現状と課題(2)-実習事後指導を通した「自己評価」と「気づき」に関する分析から-
- ロバストデザイン教育教材の開発検討(6)-観光地への来客数の集客要因の評価-
- Similar Minds: A Study on William Morris's Poetic Development under John Keats's Influence
- 伊東市および小田原市に定着した外来種ハリネズミのミトコンドリアDNA多型解析