線維性骨疾患のX線画像形態学的考察 : 根尖部領域
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概要
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線維性骨疾患, とくに根尖部にみられるものは, 個々の病変を包含して fibro-osseous lesions of periodontal ligament origin という名称が用いられ, 特別な病態変化, 特異な疾患が隠されているようである. この診断には病理組織所見だけでは多くを語れず, 臨床所見, X線画像所見が必要不可欠である. しかし, その画像所見は研究者各人によって独善的にあいまいな用いられかたをされていたため, 客観性を著しく欠いていた. そこで, そのあいまいさを是正するための独自の基準を設け, これに準じてX線写真から症例を抽出し直し, 画像形態学的に分析を行った. 本研究には, 1968年から1984年の17年間の講座保管X線写真から, まず顎骨領域の線維性骨疾患1850症例を設定し, このなかから, periapical cemental dysplasia, Horid osseous dysplasia, sclerotic cemental mass などに代表される根尖部領域の線維性骨疾患を, 周囲に透過帯を有する小円形塊状不透過像と画像定義し, sclerotic mass (SM) とした. これに, 類似疾患として, enostosis, osteosclerosis を画像定義したもの (EO), 関連疾患として, simple bone cyst, traumatic bone cyst を画像定義したもの (SBC) を加えた3っの形態を対象に検討した. その内訳は, SM: 321症例 (1,138病巣), EO: 232症例 (276病巣), SBC: 121症例 (135病巣) である. 結果は以下のとおりである. 根尖部領域の線維性骨疾患は, cementoblastoma を除くすべてが SM の範疇に含まれ, SMの経年変化における病態として解釈できた. SM の本態は周囲の透過帯にあり, 個々に終末をもつ (成長を停止する特徴) 多発性病変で, 初発病巣に隣接して多発集合する. 個々の病巣はある大きさになると中心部に実質欠損が生じ, 二次的に内部修復様の石灰化を生じる. 先人達は, この二次的に生じた石灰化物に種々の名称を付けていたに過ぎない. SM は過誤腫的な, 疑腫瘍的な特徴を合わせもつ, 単に自律的増殖性病変といえない複雑な病変である. また, EOやSBC には腫瘍性の性状はなく, 自律増殖や石灰化能を有していない. 加齢に伴う形態変化, 大きさの減少はいずれも病巣が消退・萎縮する傾向がみられる. 研究の結果から, SM, EO, SBCは画像上は異ってみられるが, すべて何らかの修復性産物であることが示唆され, 多くの類似, 共通する特徴がある. それぞれが SM, EO, SBC となる前に, おそらく前駆となる未知なる病変が存在すると考えるのが妥当であろう. これらの共通する性状から, 修復を受ける前の前駆病変の存在を仮定したところ, この病変は多発増殖性病変で, 個々の病巣は小さく, 内部に空洞を形成して活動を停止するものとなる. この前駆病変を FOL-X と命名し, この病変への3つの異なる修復型がSM, EO, SBCという名称で呼ばれ, SM はこの空洞部に対してのみ歯根膜由来の硬組織修復を受けたもので, 活動性は残遺する. EOは前駆病変が成長を止めたのち, 空洞部に周囲骨由来の修復を受けたもの, SBC は空洞部修復を受けずに静止した状態で, のちに生体の恒常性から徐々に萎縮性に修復を受けていくもの, という修復性産物説を唱えるに至った.
- 大阪歯科学会の論文
- 1994-12-25
大阪歯科学会 | 論文
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