熱膨張抑制埋没材を用いたチタン鋳造 : 第3報 大粒子コロイダルシリカ液を練和液として用いた場合
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概要
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近年, 歯科用合金によるアレルギーが問題視されている状況のなかで, チタンは生体親和性, 耐蝕性, 比重および機械的性質が良好なことから, 歯科補綴物への応用の期待が高まってきている. しかし, 純チタンは, 融点が高く高温で酸化されやすく活性が大きいという特殊な性質が鋳造を困難にしている. これらを克服するためにさまざまな埋没材が開発されているが, 保存性, 硬化時の収縮, 鋳造操作の煩雑さ, 鋳造体表面性状および鋳造体の適合性など解決すべき多くの問題を残している. 著者は, リン酸塩系埋没材をチタン鋳造に用いることを検討し, すでに試作しているリン酸塩系熱膨張抑制埋没材の特徴をチタン鋳造に応用することを試みてきた. これまでの報告で, 本埋没材を用いた純チタン鋳造冠は, 鋳巣の発生も少なく, 埋没材との型ばなれおよび表面性状もすぐれ, 本埋没材がチタンの鋳造収縮を十分に補償し得ることも示唆された. しかし, 鋳造冠表層には従来からチタン鋳造において認められている反応層が存在し, 反応層に含まれる不純物元素は, 埋没材成分以外に練和液として用いるコロイダルシリカ液濃度によって影響を受けることも明らかにした. そこで, リン酸塩系埋没材を用いたチタン鋳造体の表面性状や反応層の改善を試みる目的で, 練和液に従来から使用しているコロイダルシリカの粒子径よりも大きなものを用いて純チタン鋳造冠を製作し, その鋳造冠の表面性状ならびに反応層の様相について検討した. 金属は純チタン2種を用いた. 埋没材には, 熱膨張抑制埋没材を使用し, 練和液には, コロイダルシリカ液を用い, コロイダルシリカ粒子径 70〜100nm (大粒子) とコロイダルシリカ粒子径 7〜9nm (小粒子) のものを濃度10%と40%で使用した. 鋳造冠の作製は, 冠形態の金型から蝋型を作製してリングレス埋没し, 鋳型を焼却したのち, 真空加圧鋳造機を使用して, 室温で行った. 作製した純チタン鋳造冠について, 埋没材との型ばなれ, 表面あらさ, 硬さ, 金属組織観察および EPMA 分析を行った. また, 鋳造冠の表面性状は鋳型壁の表面性状に影響されると考えられるため, 鋳型壁の表面あらさおよび走査電子顕微鏡観察を行った. その結果, 以下の結論を得た. 1) 鋳造冠と鋳型との型ばなれは, 大粒子コロイダルシリカ40%液を用いた場合が最も良好であった. 2) 純チタン鋳造冠咬合面の表面あらさ値は, 大粒子コロイダルシリカ40%液を用いた場合が小粒子コロイダルシリカ液を使用した場合の約1/2であった. 3) 純チタン鋳造冠咬合面表層の硬度は, 大粒子コロイダルシリカ液を用いた場合が小粒子コロイダルシリカ液よりも小さな値を示した. 4) 鋳型焼却後の鋳型壁の表面あらさは, 大粒子コロイダルシリカ液を用いた場合が小粒子コロイダルシリカ液よりも小さな値を示した. 5) 純チタン鋳造冠表層部の元素分析では, Ti 濃度の希薄な反応層が存在し, この反応層には O, P, Si が存在していた. しかし, 大粒子コロイダルシリカ40%液を用いた場合は, 他の条件と比較して, Si, P の析出量は最も少ない値を示した. 以上から, リン酸塩系埋没材を用いたチタン鋳造では, 練和液に大粒子コロイダルシリカ液を用いることによって, チタン鋳造体の表面性状や反応層が従来の小粒子コロイダルシリカ液のものに比べて改善されることが明らかとなった.
- 1994-08-25
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