学童期小児の唾液より分離した β-lactam 剤耐性 Prevotella の β-lactamase 活性と外膜透過性
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概要
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近年, β-lactam 剤の開発は目覚ましく, 化学療法剤の使用量70%以上を占めている. このため, 呼吸器感染症患者の喀痰から分離した細菌の半数以上から, また, 歯性感染症から分離した嫌気性グラム陰性桿菌の7〜54%から, β-lactamase 高度産生株が検出されている. 小児でも, 急性化膿性中耳炎患者の中耳分泌物や上咽頭ぬぐい液から検出した細菌の30〜46%が, さらに唾液由来株の78%が, β-lactamase 産生株であったと報告されている. 成人の口腔由来 β-lactam 剤耐性株では, β-lactamase 活性と耐性の関係が論じられているが, 小児の唾液由来株の β-lactamase 活性は測定されていない. 本研究では, 学童期小児口腔から分離したペニシリンG (PCG) 耐性 Prevotella における β-lactamase 活性と外膜透過性の役割を検討した. 供試菌株は, 学童期小児4人の唾液から PCG 添加培地で分離した Prevotella 57株 (最小発育阻止濃度 (MIC) 100μg/ml 以上) を用いた. 供試菌の MIC は薬剤加 Wilkins-Chalgren 寒天培地を用いた寒天平板希釈法で, β-lactamase 活性はミクロヨード法で求めた. 外膜透過性は1/2 MIC のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を添加した同上の薬剤和平板で測定した. 1) 供試菌株由来 β-lactamase は, 基質アンピシリン (ABPC) およびセファゾリン (CEZ) を分解した. 両基質に対する β-lactamase 活性とセファクロル (CCL) の MIC は各症例ともおおむね相関し, β-lactamase 活性が高いほど MIC も大きかった. しかし, 同じ MIC でも, β-lactamase 活性にはかなりのバラツキが認められた. 2) 供試薬剤の MIC に β-lactamase 活性が影響を与えたと推定される範囲 (group A) を MIC ≧50μg/ml, β-lactamase 活性 ≧30mU/mg としたとき, 症例 A, B, C および D での分布割合は CCL (基質ABPC) で, それぞれ78, 50, 63および50%, CCL (基質 CEZ) でそれぞれ72, 67, 83および50%, CCL (基質CEZ) でそれぞれ72, 67, 83および50%を占めた. 3) Group Aへの ABPC の MIC の分布割合は基質 ABPC のとき, 症例 A, B および C で, それぞれ61, 50および43%を示し, 基質 CEZ でも値は類似していた. 4) 他の薬剤の MIC の group A への分布割合は症例によって異なるが, 基質 ABPC のとき, PCG で17〜57, CEZ で0〜49およびアズトレオナムで0〜33%, また, 基質 CEZ のとき, それぞれ25〜52, 0〜57および0〜50%であった. 症例別にみると, A, B および C で高い値を示した. しかし, セフメタゾール, ラタモキセフ (LMOX) およびセフテラム-ピボキシル (CFTM-PI) の group A への分布割合は著しく低く, イミペネムでは全症例でみられなかった. 5) 外膜透過性の障害は Prevotella melaninogenica では PCG, ABPC, CEZ および CFTM-PI でそれぞれ27, 25, 38および23%, P. sp. でそれぞれ37, 28, 55および30%認められたが, LMOX ではまったくみられなかった. 以上の結果より, β-lactamase は供試菌株の β-lactam 剤耐性の中心をなしているが, 一部の菌株では外膜透過性も関与しているものと推定される.
- 大阪歯科学会の論文
- 1994-08-25
著者
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