ラット口蓋粘膜とその微細血管構築の走査電子顕微鏡的研究
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概要
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ラット口蓋をその粘膜の特徴によって前方から順に, 1) 切歯-切歯乳頭間部, 2) 口蓋裂部, 3) 臼歯列間部, 4) 軟・硬口蓋移行部の4部位に分け, 口蓋粘膜の微細血管構築を立体的に観察し, 周囲組織との関連, とくに毛細血管ループと固有層乳頭の形態について部位的差異を調査し, その結果を他の哺乳動物のものと比較した. 材料および方法: 成 Wistar ラット20匹について, アクリル樹脂微細血管注入法 (太田ら1990) により口蓋粘膜の微細血管鋳型を作製, また 5N 水酸化力リウムを用いて上皮剥離標本を作製し, 走査電子顕微鏡によって口蓋粘膜の微細血管構築と固有層乳頭を観察した. 一方, 組織切片についても両者の相互関係を観察した. 所見: 大口蓋動脈は途中多数の内・外側枝を派出しつつ前走し, 粘膜下組織内で粘膜下動脈網を形成していた. さらに, これから細動脈が派出され, ヒダおよびヒダ間の粘膜固有層内で固有層細動脈叢を形成していた. この細動脈叢は切歯-切歯乳頭間部と口蓋裂部では発達していたが, 臼歯列間部の各ヒダは小型の三角板状の突起の配列によって構成されていて, 典型的な横口蓋ヒダの形をとらないので発達が悪かった. 固有層細動脈叢からは上皮直下に上皮下毛細血管網が形成されていた. この網目は切歯-切歯乳頭間部と口蓋裂部のヒダでは密で, その他の部分では疎であった. 上皮下毛細血管網から固有層乳頭内に毛細血管ループが派出していた. 切歯-切歯乳頭間部では横口蓋ヒダは存在しないが, これに代わって縦走する atrial ridge と atrial folds が存在し, それらに一致した毛細血管ループの発達が良好で特徴的であった. 口蓋裂部では左右が連続した背の高いヒダで, ヒダの前, 後両斜面には単純な毛細血管ループがみられ, 他の動物種よりも少数で密度は疎であったが, ヒダの稜線ではカイウサギと同様な連続した毛細血管ループで, とくに切歯乳頭では多数認められた. ヒダ間では毛細血管ループはさらに少なく疎で低く, 尖端が屈曲したものがみとめられた. 臼歯列間部では横口蓋ヒダは左右に偏平な多数の小型の三角板状の突起の列で構成されたヒダをつくり, これら突起に一致して隆起した固有層は大きな固有層乳頭に相当していた. この固有層内の毛細血管ループは他の部位のヒダの固有層細血管叢, 上皮下毛細血管網に相当し, 複雑な毛細血管網を呈していた. 軟・硬口蓋移行部では舌の糸状乳頭に似た突起が密集し, ここではとりわけ高いヘアピンループを認めた. 考察および結論: ラット口蓋粘膜の血管構築は全般的に他の哺乳動物と類似しているが, 横口蓋ヒダの存在しない切歯-切歯乳頭間部, 小型の三角板状の突起の列で構成されたヒダが存在する臼歯列間部と舌糸状乳頭様の特有のヒダが密集する軟・硬口蓋移行部では, 他の哺乳動物に認められない特徴がみられた.
- 1994-08-25
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