Prevotella intermedia 細胞の表層と小胞の微細構造
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概要
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Prevotella intermedia (P. intermedia) は, 種々の口腔感染症から優位に分離され, 組織破壊酵素と粘性物質産生性や線毛を有することなどから, 口腔感染症の発症と増悪化に深く関与すると考えられている. ほとんどが内因感染である口腔感染症発症のメカニズムを細胞学的に研究するには, 宿主-寄生者相互反応に基づいて, 宿主の抵抗性と細菌の動態を電子顕微鏡や光学顕微鏡で明らかにしなければならない. 本研究では, 宿主の抵抗反応に基づく細胞の微細構造変化を観察する前に, in vitro における P. intermedia 細胞の正常な表層構造とその幅を従来の固定法と凍結置換法 (FS法) で比較した. 供試菌は P. intermedia の標準株2株 (ATCC 25611 および ATCC 33563) と臨床分離株6株および Porphyromonas gingivalis の標準株1株 (381株) を用いた. 電子顕微鏡試料は, Todd Hewitt broth で24時間培養した菌体 (broth 法), この菌液を寒天培地に滴下した菌体 (BA法) および血液寒天培地上で24時間発育した集落 (寒天法) を使用した. 固定は試料をグルタルアルデヒド (GA)-OsO_4法, Kellenberger-Ryter 法 (KR法), 1% タンニン酸加 GA-OsO_4 (TA法), ルテニウムレッド加 GA-OsO_4 (Ru法) および% OsO_4-アセトンを用いた FS 法で行った. 試料を脱水後, エポキシ樹脂混合液に包埋重合し, 超薄切片を作製した. ついで, 切片を二重染色し, 透過電子顕微鏡 (日立H-800) で観察した. 1) Broth 法の試料を GA-OsO_4法とKR法で固定後電子顕微鏡で観察すると, 全供試菌の表層構造は細胞質側から細胞膜, ぺリプラズム間隙, ペプチドグリカン (PG) 層, ぺリプラズム間隙, 外膜, 電子密度の高い層および線維状構造層の7層からなっていた. 細胞膜と外膜の電子密度は高-低-高の3層であった. 細胞膜外側のペリプラズム間隙の幅は狭く, PG と細胞膜が接している場合もみられた. PG 外側のペリプラズム間隙の幅は, 細胞膜外側のペリプラズム間隙より広く, つねに観察された. 2) FS法では, 全供試菌株で明瞭な PG 層は認められず, ぺリプラズム間隙にはぺリプラズミックゲルが詰まっていた. 3) 外膜外側の電子密度の高い層の幅は供試菌株によって異なり, ATCC 33563では狭かった. この層の電子密度は Ru 法と TA 法が最も高く, ついで, FS 法, 最も低いものがGA-OsO_4法であった. 4) 最外層の線維状構造層ほ外膜外側の電子密度の高い層と同様に, Ru 法, TA 法および FS 法で良好に固定された. 5) FS 法で各表層構造の幅を測定すると, ATCC 25611, ATCC 33563 および381株細胞の細胞膜の幅は 11.0, 8.8 および 8.3nm, 外膜の幅はそれぞれ 9.5, 7.9 および 7.9nm, ぺリプラズム間隙の幅はそれぞれ 15.5, 11.2 および 13.8nm であった. 6) 小胞は, 外膜の至るところから形成され, その大きさは一定しなかった. 小胞の外側には電子密度の高い層と線維状構造が観察された. 7) 細胞質や核は KR 法, FS 法では良好に固定されたが, GA-OsO_4法では固定不良像がみられた. 以上の結果から, P. intermedia 細胞の表層は二重固定法と KR 法では7層, FS 法では5層からなり, 各構造の正確な幅は FS 法で得られるものと考えられる. FS 法によるぺリプラズミックゲルの所見は, P. intermedia と P. gingivalis 細胞の PG がぺリプラズム間隙全体に分散して存在することを示唆している.
- 大阪歯科学会の論文
- 1994-06-25
著者
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