銀含有グラスアイオノマーセメントのベース材としての諸性状について (大阪歯科大学大学院歯学研究科博士論文内容要旨および論文審査結果要旨)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ベース用セメントとしてのグラスアイオノマーセメントの有用性は, 臨床的にも既に論を待たない. しかし, エックス線造影性の不足や間接引張強度の不安が指摘されている. 今日, 銀融着グラスアイオノマーセメントが市販されており, グラスアイオノマーセメントにアマルガム用アロイを混入する方法を臨床的に応用しているという報告もある. 今回私はこれら銀含有グラスアイオノマーセメントがベース材としてどのような性状を具備しているかという点について, ベース材の所要性質のうち, 象牙質代替層としての強度, とくに比例限界強度とその範囲内で成立するヤング率, 粘り強さの指標としての間接引張強度をCompressive Propertiesとして求めた. さらに象牙質との接着強度を検討すると同時にジスク径についても検討した. また, エックス線造影性についての検討も併せて行った. 実験材料は, アロイ混入セメントとして松風社製Glas Ionomer FにSpherical Dアロイをセメント粉末重量の5, 10, 20, 30, 40, 60, 80, 100重量%追加混入したセメントについて行った. 銀融着セメントとしてChelon Silver (ESPE), 対照は同社のKetac Bondである. 粉液比は業者指定を含め, さらに粉量を3〜4段階増加させて行った. 実験方法は, Compressive Propertiesの測定において, ADAS No. 9に準拠して圧縮強度を測定し, LVDTを用いて応力-歪み曲線を求め算出した. CHSは0.5mm/minとした. 接着試験の被着歯は抜去後3〜6か月間4℃生理食塩水中に保存したヒト臼歯とし, #600耐水ペーパーで面出しした咬合面部象牙質を被着体とした. 被着面は直径4mmで, 荷重200gで接着しCHS 0.5mm/minで引張試験を行った. 測定は何れの実験もセメント練和後30分と24時間に行った. ジスク径の測定はADAS No. 9に準拠して行った. エックス線造影性に関する結果は, 今後詳細な実験を待たねばならないが, ヒト臼歯の象牙質, エナメル質とアロイ混入セメントのデンシティーの差を同一厚さの試料において検討し, 臨床的に応用した咬翼法エックス線写真より判断を試みた. 上記の材料, 方法によって銀含有グラスアイオノマーセメントのベース材としての諸性質を検討した結果, 以下の結論を得た. 1) アロイ混入によるCompressive Propertiesへの影響は, 圧縮強度については認められなかったが, ヤング率において, 30重量%以上のアロイ混入セメントで, 高高粉液比の場合にその効果が認められた. 間接引張強度は60%アロイ混入セメントにおいて効果が認められたが, 他の%では一定の傾向はなかった. 2) 全試料について, 30分後と24時間後のCompressive Propertiesには大きな差が認められた. 3) アロイ混入セメントのヒト象牙質への接着強度は, Glas Ionomer Fのみの場合とほぼ同一で, 30分後と24時間後との間にも差は認められなかった. 4) アロイ混入セメントのエックス線造影性は, 20重量%の混入があれば, 臨床的に必要かつ十分であると思われる. 5) ジスク径はアロイが混入されると増加し始めるが, 30重量%以上混入されると逆に減少傾向を示した.
- 1990-06-25
論文 | ランダム
- 農家生活の質的向上に関する研究 : 日韓共同研究第1報(共同研究の目的と構成および生活経営からみた農家生活の実態)
- 67. 潰瘍性大腸炎の手術適応と術式に関する検討(第6回日本消化器外科学会大会)
- 膀胱腸裂5例の臨床的検討 : 特に治療面から
- 81 Vesico-intestinal fissure5例の臨床的検討
- Serous cystadenoma of the pancreas associated with pancreas divisum