KB細胞移植ヌードマウスにおけるX線とCDDPの同時併用による抗腫瘍効果 (大阪歯科大学大学院歯学研究科博士論文内容要旨および論文審査結果要旨)
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概要
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頭頚部領域の悪性腫瘍の治療においては, 形態および機能をできるだけ保存する目的で, 外科療法よりも, むしろ放射線療法と化学療法の併用が第一選択とされる傾向にある. 放射線と併用される化学療法剤として, 近年ではcis-diamminedichloroplatinum (以下, CDDPと略す) が注目されている. これまでにも, in vitro, in vivoでの放射線とCDDP併用療法については多数の報告がなされているが, その投与方法, 投与量には一致した見解がみられない. また, それらの研究も, 主として口腔以外の細胞や腫瘍を用いたもので, ヒト口腔癌を対象としたin vivoでの実験は皆無である. そこで本研究では, ヒト口腔癌由来のKB細胞をヌードマウスに固形腫瘍として発育させたものを用い, X線とCDDPの同時併用による抗腫瘍効果について検討を行った. 実験動物にはヌードマウスを1群5匹として用いた. X線照射は, 島津信愛号改良型を用い, 無麻酔下にて行った. CDDPはランダ^<[○!R]>注を5倍希釈し, 腹腔内投与した. 抗腫瘍効果の判定は, 治療群 (T) と対照群 (C : 無治療群) の相対平均腫瘍重量によりT/C比 [T/C of relative mean tumor weights, T_<RW>/C_<RW>=(T_<Wn>/T_<Wo>)/(C_<Wn>/C_<Wo>), day nとday 0] を基に検討した. 副作用の検討は, 治療群 (T) と対照群 (C : 無担癌群) の相対平均体重によるT/C比 [T/C of relative mean body weights, T_<RBW>/C_<RBW>=(T_<BWn>/T_<BWo>)/(C_<BWn>C_<BWo>)] に基づいた. なお, 測定された体重 (MW) から推定腫瘍重量 (W) を差し引いたものをヌードマウス自身の体重 (BW=MW-W) とした. 同時併用に先だって, X線単独投与群, CDDP単独投与群について, その抗腫瘍効果, 副作用を検討し, 同時併用群の投与量をX線2Gy, 4Gy, 6Gy, CDDP 1mg/kg, 2mg/kgのそれぞれの組み合わせとした. なお, CDDPの投与は照射30分〜1時間後に行った. 同時併用効果の検討は, 同時併用群の観察終了時のT_<RW>/C_<RW>値と, 各単独投与群の観察終了時のT_<RW>/C_<RW>値の積とを比較して行った, また, 単独投与群の観察終了時のT_<RW>/C_<RW>値を用いて, X線とCDDPの等効果値を算定した. さらに, この等効果値を用いてCDDP単独投与群および同時併用群の投与量をX線線量に換算し, それぞれの観察終了時のT_<RW>/C_<RW>値を比較し, 等効果値の検定を行った. 結果ならびに結論は以下の通りである. 1) X線とCDDPの同時併用効果は, ほぼ相加効果であった. 2) CDDP5日間連日投与における1mg/kgは, X線2Gy, 5日間連日投与における4.56Gyと抗腫瘍効果において等効果値をもつと考えられた. 3) 同時併用群における体重減少は, 単独投与群より大きいものの, その程度は小さく, また回復傾向も十分みられた. 以上より, X線とCDDPの同時併用療法は抗腫瘍効果が高く, 副作用の比較的少ない治療法という結論を得た.
- 大阪歯科学会の論文
- 1990-06-25
著者
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