歯の石灰化に関する臨床的研究 : とくに永久前歯部について (大阪歯科大学大学院歯学研究科博士論文内容要旨および論文審査結果要旨)
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概要
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永久歯の成長発育に関する報告は, Hellman, Schour・Massler, Nolla, Moorrees et al.およびHaavikkoたちの研究報告がみられる. これら先人のなかには, 歯牙発育図表を作成し, 臨床上有用されている. しかし, 歯の発育は, 人類, 地理, 社会環境, 遺伝, 個体差などによって左右されるほか, 近年, 発達加速現象による生歯の前傾が指摘されている. 一方, 永久歯をとりまく生歯環境は決して好ましいものではなく, 食生活の変化による咀嚼や栄養の問題, 先行乳歯の齲蝕をはじめ, 早期喪失や歯周組織などの状態によっても永久歯自体の発育状態や萌出時期は大きく左右される. 小児歯科臨床において, 乳歯列から永久歯列への咬合の移行, とくに, その根幹をなす歯の発育, 石灰化段階を十分把握することによって咬合誘導治療の成果を期待し得るものと考えられる. しかしながら, 現在わが国で用いられている資料は, 前述の欧米白人小児による資料が主であり, それらは比較的少数の被験者や, 限られた屍体から得られたものが含まれ, 必ずしもわが国の小児における歯の成長発育の実態と合致しないものがある. そこで, 著者は, 1回の撮影で上, 下顎歯を同時に総覧することができるオルソパントモグラフィが最も適した方法であると考え, 2歳0か月〜14歳11か月児4,143名 (男児2,205名, 女児1,938名) のオルソパントモグラム11,167枚 (男児5,759枚, 女児5,408枚) を資料とし, Moorrees et aI.の歯の発育段階の分類法にしたがって13段階に分類し, 本邦小児における永久前歯の発育 (石灰化) 段階を調査分析し, 小児歯科臨床で直接役に立つ, 日本人小児の永久前歯の標準発育図表を作成することを目的として本研究を行った. その結果, 次の結論を得た. 1) 永久前歯の各発育 (石灰化) 段階は, 女児のほうが, 男児よりも発育が早く, とくに発育中期においてその傾向が強かった. 2) 永久前歯の各発育 (石灰化) 段階の左右側間の比較では, 男, 女児ならびに上, 下顎歯とも同名歯間に発育の差を認めなかった. 3) 永久前歯の上, 下顎歯間における発育の比較では, 男, 女児とも切歯群において, 下顎歯のほうが発育が早いが, 犬歯においては差を認めなかった. 4) 日本人の永久前歯の各発育 (石灰化) をNolla, Moorrees et al., Haavikkoたちの白人の成績と比較すると, a) 切歯群においては, 白人に比べて日本人の発育年齢はかなり遅れた. b) 犬歯においては, 歯冠完成期などの発育初期の段階での形成年齢は白人が早く, 歯根2/3形成期から根尖完成期までの発育後期では日本人の発育年齢が早かった. c) 各永久前歯の発育期間を比較すると, 日本人の切歯群は, 長くかかり, 犬歯では逆に短いことがわかった. 5) 以上の調査結果をもとに, 日本人小児の永久前歯の標準発育図表を作成し, 日常臨床に応用できるようにした.
- 1990-06-25
著者
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