低濃度フッ素のエナメル質に及ぼす影響に関する実験的研究 : Intraoral Fluoride Releasing Systemを想定し, フッ素を作用させたエナメル質の結晶性および耐酸性について (大阪歯科大学大学院歯学研究科博士論文内容要旨および論文審査結果要旨)
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概要
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Intraoral Fluoride Releasing Device (以下, IFRD) 法は, 口腔内のフッ素 (以下, F) 濃度を長期間一定に維持することが可能で, 低濃度のFがエナメル質に効果的に取り込まれ, 齲蝕抑制効果が期待できる. IFRDによるエナメル質深部へのFの浸透および耐酸性の向上などについては報告されているが, IFRDから放出される低濃度のFがエナメル質の結晶性に及ぼす影響については, ほとんど研究されていない. そこで, IFRDを臨床応用するための基礎的研究として, IFRDを使用した場合を想定したフッ化ナトリウム溶液 (フッ素濃度1ppm, 10ppm, 100ppm, 500ppmおよび1,000ppm, pH7.0) へ, ウシエナメル質および合成ハイドロキシアパタイト (以下, 合成HA) を長期間 (10, 20, 30, 50および100日間) 浸漬して実験を行い, 低濃度Fによるエナメル質の結晶性の変化についてエックス線回折的に調べ, 同時に試料に取り込まれたF量および耐酸性をも検討した. さらに, エックス線マイクロアナライザーを用いて未脱灰および脱灰面の観察および元素分析を行った. その結果, 1) 合成HAでは, いずれの実験群も浸漬日数の延長とともにFの取り込み量は増加し, とくに, 低濃度群では浸漬日数に比例して取り込み量は増加した. 2) 合成HAは, いずれの実験群も浸漬日数の増加とともに耐酸性は向上し, とくに, 1ppm群では浸漬日数に比例して耐酸性の向上が認められた. 3) 合成HAおよびエナメル質粉末は, いずれもフッ化ナトリウム溶液のF濃度上昇にともない, また, 浸漬日数の延長につれて結晶性が改善された. これは, フッ化物によってHAがフルオルアパタイトあるいはハイドロキシフルオルアパタイトに変化したためと考えられる. また, いずれの実験群にもフッ化カルシウムは検出されなかった. 4) エナメル質へのFの取り込みは, 浸漬日数の延長とともに, また, 作用させたF濃度が高いほど増加を示した. また, エナメル質深部への浸透は高濃度群になるほど著明であった. 5) エナメル質表層部の耐酸性は, いずれの実験群も対照群に比べて向上したが, 1ppm群の10, 20および30日浸漬では脱灰12時間以降で, 10ppm群の10日浸漬では脱灰24時間以降で溶出カルシウム量が対照群に近似した. 一方, 高濃度群では48時間脱灰でも溶出カルシウム量は少なかった. 6) SEMによる脱灰面の観察では, 低濃度群の30日浸漬でエナメル質表層下50〜150μmに及ぶ脱灰層がみられ, かつ実質欠損をともなっていた. しかし, 浸漬日数の延長によって実質欠損は縮小した. 一方, 高濃度群でエナメル質表層から脱灰が進行したが, エナメル質表層下には脱灰は認められず, 浸漬日数の延長によってエナメル質表層の脱灰層が非薄となった. さらに, エックス線マイクロアナライザーによるF分布の所見では, それぞれFが取り込まれた深さまでエナメル質が強化され, 脱灰が抑制されたと考えられた. 以上のことから, IFRDからの徐放Fを想定した低濃度のフッ化物溶液をエナメル質に作用させた場合には, 浸漬日数を延長させることによりエナメル質の結晶性は改善され, 耐酸性は向上することを明らかにできた.
- 1990-04-25
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