下顎側方偏位例の下顎頭運動に関する研究
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概要
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顔面非対称と下顎頭運動との関連性を調べることの一環として, 下顎側方偏位量と下顎限界運動時の両側下顎頭運動との関連性について解明することを目的とした。顎機能異常のない永久歯列期の被験者20名の, 正貌セファログラムを用いて, 骨格的偏位量(CG-ANS 線と, ANS-Menton線とのなす角度)の計測を行った。顎運動の計測方法は, 三次元6自由度顎運動測定装置ナソヘキサグラフJM-1000を用いて, 下顎限界運動を測定した。そして, 下顎切歯点と全運動軸点の運動から三次元顆頭実移動量, 下顎回転角, 矢状顆路角を求め, それらの値を非対称性指数として算出し, 下顎側方偏位量との相関を調べた。その結果, 1) 最大開口時で偏位側顆頭移動量は非偏位側よりも大きいが, 下顎回転角は非偏位側のほうが大きかった (p<0.05)。その他の顎位では相関が認められなかった。2) 最大開口時での顆頭移動量非対称性指数と下顎回転角非対称性指数との間では, 負の相関傾向(p<0.1)がみられたが, 有意差は認められなかった。3) 前方限界運動時の顆頭移動量非対称性指数と矢状顆路角非対称性指数との間では, 相関が認められなかった。以上のことから, 下顎側方偏位による両側下顎頭運動への影響は, 最大開口運動時の顆頭移動量と下顎回転角に関係し, 顆頭移動量は偏位側での運動距離が長くなっており, 下顎回転角は非偏位側での回転角が大きくなっていることが示唆された。
- 1997-09-25