ヒト口腔癌ヌードマウス移植系におけるエピネフリン併用温熱療法の効果
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概要
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温熱療法は, 加温温度が高く, 加温時間が長いほど抗腫瘍効果が大きくなる治療法である。しかし, 同時に加温される腫瘍周囲正常組織が受ける影響を考えると, 腫瘍部のみを選択的に加温することが理想である。一般に, 加温の効率は血流量が少なく, 低pHの部分で高いと考えられるので, 腫瘍血流量を減少させ, 低pHにすることにより, 腫瘍部を選択的に加温できる可能性がある。エピネフリンは代表的な血管収縮剤で, 低pHの薬剤であるので, 温熱療法と併用すれば抗腫瘍効果を増大させることが期待できる。そこで, 本研究ではヒト口腔癌ヌードマウス移植系における, エピネフリン併用温熱療法の抗腫瘍効果についで検討を行った。実験材料および方法: 実験腫瘍はKB細胞(poorly differentiated epidermoid carcinoma)で, それを雌のヌードマウス(BALB/cA, 4週齢)の大腿皮下に挿入移植したものである。固形腫瘍移植20日後, 腫瘍長径が約8 mm前後になったものを1群5匹として実験に供した。エピネフリンはボスミン^<(R)>注(エピネフリン: 1 mg/ml)を生理食塩液にて希釈した溶液を使用した。まず, エピネフリンの投与量依存性をみるために, エピネフリン濃度が0.25 mg/mlになるように調整した溶液を, 0.04, 0.08および0.12 ml投与した。ついで, エピネフリンの濃度依存性をみるためには, エピネフリン濃度が0.35あるいは0.15 mg/mlになるように調整した溶液を用い, それぞれ0.06あるいは0.13 ml (0.25 mg/ml溶液の0.08 ml投与相当分のエピネフリン量)を投与量とした。いずれの投与も腹腔内あるいは腫瘍内局注投与とし, 3日間隔で3回行った。なお, 併用群におけるエピネフリンの投与は加温直前とした。加温にはデジタル恒温槽を用い, ヌードマウスを全身麻酔後, 著者らが作製した固定具に入れ, 腫瘍の近心側が水面下約1 cmになるようにテープで固定し, 局所加温を行った。加温条件は39, 41および43℃, 各30分間とし, エピネフリン投与と同様, 3日間隔で3回実施した。抗腫瘍効果は, 担癌無治療群を対照群とし, 各群の実験開始後20日目の相対平均腫瘍重量比 (Relative mean tumor weights: RW_<20>)の値にて検討した。抗腫瘍効果の有意差検定はt検定で行った。併用効果の検討は, 実験開始後20日目の各群の相対平均腫瘍重量によるT/C比(T/C of the relative mean tumor weights, T_<RW>/C_<RW>, T:治療群, C:対照群)の値を用い, 併用群のT/C値と, 各単独群のT/C値の積を比較する方法を採った。また, 各エピネフリン投与量および濃度における加温温度別増感率をRW_<20>値の比により算定した。実験結果: 1) エピネフリン自体には抗腫瘍効果はなかった。2) エピネフリン腹腔内投与併用温熱療法では, 併用効果は認められなかった。3) エピネフリン局注併用温熱療法は相乗効果を示し, 低い温度においても併用効果が認められた。4) エピネフリン局注併用温熱療法の温熱増感作用は, エピネフリン濃度に依存していた。以上の結果から, エピネフリン局注併用温熱療法は抗腫瘍効果が高く, 比較的低い温度でも併用効果の得られる治療法と考えられた。
- 1997-06-25
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