ドイツ乗用車メーカーのグローバル化戦略と経営システムの革新 : ドイツの視点からの産業と企業の再生と課題(日本の産業と企業の再生: グローバル・パースペクティブ)
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概要
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MITの国際自動車研究プログラム(IMVP)の報告書は、1980年代におけるドイツの自動車メーカーの国際競争力に対して非常に厳しい評価を下したが、1990年代に、とくにドイツ「民族系」乗用車メーカーは、国際自動車業界において高い競争力を有する、革新的なグローバル・プレイヤーへと「復活」ないし「躍進」を遂げるところとなった。この時期、このドイツ乗用車メーカーは、生産システムの革新をグローバルな競争戦略の大胆な転換と連動させて展開させたのであり、グローバル化戦略、マルチ・ブランド化戦略そして組織的学習という三つの局面の加速的かつ相即的な展開を通じて経営システムの革新を実現させ、これによってその競争力を高めるところとなった。そこで本論文は、こうしたドイツの自動車メーカーの「再生」プロセスを、合併と買収を積極的に活用しつつ、マルチ・ブランド化戦略と連動したグローバル化戦略、とくに海外現地生産拠点から開始された「リーン生産方式」の組織的学習とその「純化」と「創発」に注目しながら、ボトムアップ型現場重視の「日本的」な競争能力の構築とは異なる、ブランド重視の、トップ主導のトータル・システムとしての経営革新を通じた競争優位性の確立という「もう一つの道」の可能性を明らかにすることで、第10大会の「日本の産業と企業の再生-グローバル・パースペクティブ-」と題する統一論題の課題に応えようとするものである。その検討の結果、企業の競争力は、現場主導の不断の生産システムの革新だけでなく、開発・購買・人事労務・販売等を含むトータル・システムとしての経営革新を通じて創出されるものであり、この経営革新においては、何よりも「強力なリーダーシップ」に基づく、トップ主導の戦略構想力と実行力こそが重要であることを、1990年代におけるドイツ系ビッグ・スリーの「再生」と「躍進」は示していること、そしてこの点にこそ今後の日本における「モノづくり」の大きな課題がなお残されていることを明らかにする。
- 2004-09-30
著者
関連論文
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