シプロコナゾールの毒性試験の概要
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概要
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シプロコナゾール原体は経口投与によりラットに対しては毒性は低く, マウスに対しては中程度の毒性を示した.その製剤の毒性は, 経口投与でラットおよびマウスとも低かった.また原体・製剤とも経皮毒性は低い値であった.原体・製剤とも眼に対して弱い刺激性が認められたが, 皮膚に対しては刺激性は認められなかった.またモルモットを用いたMaximization法による皮膚感作性の試験では, 原体・製剤とも感作性は認められなかった.ラットあるいはイヌを用いた亜急性毒性試験において, シプロコナゾール原体投与により中用量および高用量群のいくつかの血液生化学検査項目が影響を受けた.また体重増加量の減少および肝臓重量の増加がラットおよびイヌの高用量群で認められた.ラットを用いた慢性毒性/発癌性併合試験において, シプロコナゾール原体投与により一部の血液学的あるいは血液生化学検査項目が, おもに高用量群で影響を受けた.また体重増加量の減少および肝臓重量の増加が高用量群で認められた.組織病理学的検査の結果, 高用量群において雄では肝細胞の脂肪化が, 雌では肝細胞肥大が認められた.中間屠殺・最終屠殺時とも腫瘍性病変の発生率には, シプロコナゾール原体投与の影響は認められなかった.マウスの発癌性試験において, シプロコナゾール原体の中高用量および高用量群で体重増加量の減少および肝臓重量の増加が認められた.また肝細胞腫の発生頻度が, 雄の中高用量および高用量群および雌の高用量群で増加した.これらの観察された腫瘍を引き起こす機構は, 肝酵素の誘導による腫瘍のプロモーション作用であり, 非遺伝毒性的なものである.イヌの慢性毒性試験において, シプロコナゾール原体を投与した中用量および高用量群の雌雄でチトクロームP-450活性の上昇が観察された.また高用量群の雄で体重増加量の減少, 雌雄で肝臓重量の増加が認められた.雌雄とも低用量群ではシプロコナゾール原体投与の影響は何ら認められなかった.ラットを用いた2世代繁殖試験において, 繁殖に関する検査項目に対して投与の影響は何ら認められなかった.唯一認められたシプロコナゾール原体投与の影響は, F0世代の雄の高用量群での肝細胞の脂肪化であった.ラットを用いた催奇形性試験では, シプロコナゾール原体の中高用量および高用量群で体重増加量の減少および着床痕の増加が認められた.またウサギを用いた催奇形性試験では, シプロコナゾール原体の高用量群で体重増加量および摂餌量の減少加着床痕の増加が認められた.シプロコナゾール原体投与に関連した外表, 骨格あるいは内臓の異常は認められなかった.シプロコナゾール原体は細菌あるいは哺乳類細胞を用いた試験系において, 突然変異を引き起こさなかった.シプロコナゾールは1995年に登録されて以来, 畑地作物の重要な殺菌剤の一つである.
- 1997-08-20