造林場面における除草剤の利用に関する研究
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概要
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造林という場面での除草剤の利用を次の四つに分けて研究した。 (1) 林地に共存する雑草が林木に与える影響のうち,光のさえぎり,養分の奪取,水分の奪取の3点について研究した。 まず光のさえぎりについては,阿蘇山原野において草生の存在が照度比を減少させる程度を調査し,草頂から地表へ照度が急激に減少し,草丈の1/2の位置で,ほぼ10%にまで低下すること,地表面では,草丈に比例して光はさえぎられ,17%~3%であったことを確かめた。照度の減少は確実に林木の光合成能を低下させ,標識CO_2のとりこみは,常に陽光にさらされている林木葉で最低となった。植栽木もまた地表への光をさえぎるが,6年生スギ林の調査結果では林内の樹冠投影部分と等しい面積が80%照度比部分であった。壮齢林分では,さらに光をさえぎられた。養分の奪取は,ポットとライシメーターで,および燐については林地で標識過燐酸石灰で実験されたが,燐と加里では奪取は少なく,窒素で著しかった。それはていねいな植栽や施肥によって軽減できることがわかった。植栽の功拙が競合に関係深いところから,現地林分の林木根,雑草根の形態と分布を調査して,競合との関係を考察した。水分の奪取は,雑草根が一般に浅いところから,土壌が著しく乾燥されても地表面近くではげしく,林木根の分布部分では影響が少ないことを知った。 (2) 除草剤が苗畑林地に施用された場合,林木がうける生理作用を研究した。 2,4-D,DPA,NaClO_3および硫安による葉,根への処理が,ポトメーターでの吸水量―蒸散―を濃度に比例して著しく減少させること,また,施用から枯死にいたる間呼吸を増加させることを明らかにした。 アイソトープで標識されたCO_2のとりこみから推察される光合成能は,処理後24時間内に急激に低下させており,除草剤は光合成に最も敏感に影響すると思われた。 2,4-Dのスギ,広葉樹,雑草での体内移行を,アイソトープ標識によって実験したが,林木で小さかった。また塩素酸ソーダは土壌に施用されれば,7日~10日後に分解流亡を始め,それは,硫安添加でやや著しくなり,この傾向は林木吸収でも同様であった。除草剤は発芽には影響しないが,生育には吸収量に応じて,はげしい影響を与えることを,まきつけ床の当年生,床替床の2年生,林地での当年生,1年生について研究し,実用場面での施用量を検討した。 (3) 除草剤が雑草木に与える影響として,まず苗畑.林地の草生を九州地方の数ケ所で調査し,苗畑ではメヒシバが圧倒的に主草生であること,林地ではススキの類が多いが,植栽木の生長に伴う光の変化で,草生が変化していくことを知った。 雑草木の枯殺,生育抑制については,地ごしらえのためのススキ,広葉樹の除草剤処理を行ない,ススキにはDPA60kg/haが地ごしらえに有効で草生を一変させ,広葉樹枯殺と萌芽抑制にはフェノキシ系の傷口処理が実用化しうると思われた。 施業苗畑のまきつけ床,床替床では,フェノキシ系,トリアジン系,尿素系除草剤の影響を雑草抑制から研究し,CATの効果の高いことを明らかにした。 さらに造林地では,塩素酸ソーダとDPAが適切な散布法がとられれば,抑制面で有効で,林地草生の1/6~1/10を抑制することを確かめた。この章ではまた,シダの枯殺についても種々の除草剤で試験され,スルファミン酸アンモンの6kg/aの枯殺効果を認めた。 ④ 林業における除草剤施用の効果について,苗畑では,前処理と肥料混用の効果の高いことから,それらを組みこんだ施用法とその効果を論じ,林地では同様,肥料混用の効果とスポット散布のすぐれていることを論じた。
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