深部体温および血漿グルココチコイド濃度における急性心理的ストレス曝露の影響について
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概要
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情動ストレスにより生体に及ぶ影響が侵害ストレスによるものと比べどの程度であるかを明らかにする目的で、ラットにコミュニケーションボックスを用いて電気ショックを受ける侵害ストレス(Foot-shock,FS)あるいはそうしたラットからの情動反応を受ける情動ストレス(Nonfoot-shock,NFS)を負荷し、両ストレスの急性曝露時の生体の反応を比較検討した。測定項目は、RIAによる血漿コルチコステロン濃度、テレメトリーシステムによる行動量および深部体温とした。コミュニケーションボックスによるストレス曝露では、FS群のラットに対し1分毎に1mAの電気ショックを10秒間パルス状に負荷し、計1時間負荷した。コミュニケーションボックスでは、その間NFS群のラットにも情動ストレスが負荷されることになる。その結果、情動ストレスに曝露すると行動量、体温、血漿コルチコステロン濃度いずれもベースライン値に比べ有意に増加もしくは上昇したが、その程度は侵害ストレス群に比べ減弱していた(行動量(counts/10 min)、FS群:+134.3±21.5、NFS群:+27.2±22.3;体温(℃)、FS群:+2.44±0.19、NFS群:+1.20±0.25;血漿コルチコステロン濃度(g/dl)、FS群:+20.2±4.7、NFS群:+7.4±1.9)。これまでの研究で、情動ストレスに慢性曝露したラットでは侵害ストレス群とは異なり高体温が認められることを明らかにしている。以上の結果から、コミュニケーションボックスを用いたストレス負荷では、情動ストレスは急性曝露による影響は小さいものの繰り返しの曝露によりその影響は侵害ストレスよりも強くなるあるいは後遺することが示唆された。すなわち、こうした心理的ストレスは外部から観察しにくいことに加え、繰り返されることにより生体への影響が大きくなることから産業医学上その対策はとりわけ重要と考えられる。
- 産業医科大学学会の論文
- 2002-03-01
著者
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